災害支援ナースは、厚生労働省医政局が実施する養成研修を修了し、同局に登録された看護職員の総称です。 大規模な自然災害や新興感染症のまん延のときに被災地などへ派遣され、地域住民の健康を守るための看護と、現地の看護職員の負担を軽くする支援を行います。

令和6年度から、災害支援ナースは医療法にもとづく「災害・感染症医療業務従事者」に位置づけられました。派遣は、都道府県と、看護職が所属する施設とが結ぶ協定にもとづいて行われます。

この記事は、厚生労働省の「災害支援ナース活動要領」と都道府県の資料をもとに、研修・登録・派遣の流れ、費用と補償、所属施設がない場合の扱いを整理します。登録や派遣に応じるかどうかは、この記事では判断しません。

この記事の結論

  • 災害支援ナースは、厚生労働省医政局の養成研修を修了し、登録された看護職員の総称です(1章)
  • 令和6年度から、医療法上の「災害・感染症医療業務従事者」になりました。厚生労働省の資料は、令和6年度からの仕組みに新興感染症のときの派遣を含めています(2章)
  • 登録は5年ごとに更新で、有効期間中に更新のための研修を1回以上受ける必要があります(3章)
  • 派遣は都道府県と所属施設の協定にもとづきます。期間の目安は、大規模自然災害で原則3泊4日、新興感染症でおおむね2週間です(4章)
  • 費用は派遣を要請した都道府県が支弁し、都道府県は活動中の事故に備えて傷害保険に加入します。本人には賠償責任保険への加入が望ましいとされています(5章)
  • 所属施設がない場合は、都道府県が直接雇用するか、都道府県看護協会が雇用する方法が示されています(6章)

読みたい箇所から確認する

1. 災害支援ナースとは

先に答えを置きます。災害支援ナースは、厚生労働省医政局の養成研修を修了し、同局に登録された看護職員の総称です。

活動要領の定義

厚生労働省の「災害支援ナース活動要領」(令和6年4月1日)は、災害支援ナースを次のように定めています。

被災地等に派遣され、地域住民の健康維持・確保に必要な看護を提供するとともに、看護職員の心身の負担を軽減し支えること(以下「看護支援活動」という。)を行う看護職員

あわせて、「厚生労働省医政局が実施する災害支援ナース養成研修を修了し、厚生労働省医政局に登録された者の総称」とも書いています。

活動の中身

活動要領は、災害支援ナースの活動を次の2つとしています。

活動

内容

看護の提供

地域住民の健康維持・確保に必要な看護

看護職員への支援

現地の看護職員の心身の負担軽減・支援

活動は保健師助産師看護師法を遵守して行うとされています。令和7年12月の一部改正(令和8年4月1日から適用)は、優先する活動先を次のように示しています。

場面

優先する活動先

大規模自然災害

被災した医療機関、社会福祉施設、避難所(福祉避難所を含む)

新興感染症

看護職員の支援が必要な医療機関、社会福祉施設、宿泊療養施設

この章の出典

  • 厚生労働省「災害支援ナース活動要領について」(令和6年3月29日 医政地発0329第3号・医政看発0329第1号)
  • 厚生労働省「災害支援ナース活動要領の一部改正について」(令和7年12月23日 医政地発1223第1号・医政看発1223第1号)

2. 令和6年度から何が変わったか

先に答えを置きます。令和6年度から、災害支援ナースは医療法上の「災害・感染症医療業務従事者」になりました。厚生労働省の資料は、令和6年度からの仕組みとして、都道府県と所属施設の協定にもとづく派遣と、新興感染症のときの派遣を示しています。

医療法の2つの条文

条文

定めていること

医療法30条の12の2

厚生労働大臣は、都道府県知事の求めに応じて派遣される者を「災害・感染症医療業務従事者」として登録する。登録は、承諾をした者の申請により行う

医療法30条の12の6

都道府県知事は、病院・診療所の管理者と協議し、合意が成立したときは協定を締結する。協定には、派遣の求めと派遣、他の都道府県への応援派遣、業務の内容、費用の負担方法、有効期間などを含める

神奈川県は、この改正で災害支援ナースが「DMATやDPATと同様に」災害・感染症医療業務従事者として位置づけられたと説明しています。

旧制度からの移行

厚生労働省の資料は、令和5年度までの仕組みで令和6年3月末時点で約1万人が登録されていたこと、新しい仕組みでは令和6年4月時点で約4千人が登録され、令和6年度にさらに約4千人が研修中であることを示しています。

令和7年12月の一部改正では、令和5年度以降の研修修了者で、医療法30条の12の2の業務に従事することを承諾した人は、申請により災害・感染症医療業務従事者として登録できるとされました。以前に登録していた人が新しい仕組みでどう扱われるかは、所属施設か都道府県に確認してください。

この章の出典

  • 医療法 30条の12の2・30条の12の6(静岡県の資料に掲載された活動要領通知の引用で確認)
  • 神奈川県「災害支援ナースについて」
  • 厚生労働省「令和6年度からの災害支援ナースの仕組み(災害・新興感染症対応)」

3. 研修と登録(なるには)——5年ごとの更新

先に答えを置きます。養成研修を修了すると厚生労働省医政局に登録され、登録は5年ごとに更新します。有効期間中に更新のための研修を受けないと、更新されません。

研修の申込み(広島県の例)

広島県看護協会が掲載している「令和8年度 災害支援ナース養成研修 募集要項」は、受講要件を次のように書いています。

広島県と派遣に係る協定を締結することに同意している、または既に協定を締結している施設に所属する者

項目

広島県の募集要項の記載

申込みの単位

施設単位(医療機関は看護管理者が申し込む)。潜在看護師のみ個人での申込が可能

研修の構成

日本看護協会のe-ラーニングによるオンデマンド研修と、集合研修(講義・演習)

受講料

無料

受講要件(ほか)

修了者リストの提供と、災害・感染症医療業務従事者・EMIS(広域災害・救急医療情報システム)への登録に同意する者

活動要領と広島県の募集要項には、実務経験の年数や職種(准看護師を含むか)の要件は書かれていません。募集要項は都道府県ごとに出ているため、所属施設の看護管理者か、都道府県の担当課・看護協会に確認してください。

登録の有効期間

項目

活動要領の記載

有効期間

5年。年度の途中に登録された場合は、その年度とその後4年間

更新の条件

有効期間中に、更新を目的とした研修を1回以上受講する。受講しなければ更新されない

登録内容の変更

所属施設が変わったときなどは、EMIS上の情報を本人が更新する(令和7年12月の一部改正)

所属施設を変えたときは、登録内容の変更が要ります。単発やパートで働く場所が変わる人は、どこを「所属施設」として登録しているかを確認しておきます。

この章の出典

  • 「令和8年度 災害支援ナース養成研修 募集要項」(広島県看護協会掲載)
  • 厚生労働省「災害支援ナース活動要領」(令和6年4月1日)、同一部改正(令和7年12月23日)

4. 派遣の流れと期間

先に答えを置きます。派遣は、都道府県と所属施設の協定にもとづき、都道府県の要請で行われます。活動は派遣先の施設の管理者の下で行い、期間は大規模自然災害で原則3泊4日、新興感染症でおおむね2週間が目安です。

協定と要請

平時:都道府県 ⇄ 所属施設(病院・診療所・訪問看護事業所・助産所・看護協会など)
      で、派遣に関する協定を結ぶ
          ↓
発災・感染症のまん延
          ↓
都道府県が、協定を結んだ施設に派遣を要請する
          ↓
施設から災害支援ナースが派遣される
(基本は都道府県内。大規模災害では他の都道府県へ)
          ↓
派遣先の施設の管理者の下で活動する
          ↓
活動後、派遣元の施設が活動報告を出す(島根県の要領の例)

厚生労働省の資料は、協定の相手として病院・診療所・訪問看護事業所・助産所・都道府県看護協会などを挙げています。活動は「都道府県内の医療機関等で当該施設の管理者の下で活動することが基本となる」とされ、大規模災害のときは他の都道府県で活動することもあるとしています。なお、医療法30条の12の6の条文が協定の相手として書いているのは病院・診療所の管理者で、訪問看護事業所などは厚生労働省の資料の記載です(2章)。

派遣の期間

場面

活動要領が示す目安

大規模自然災害

発災後3日以降から、おおむね1か月(急性期〜亜急性期)。個々の派遣は、移動時間を含めて原則3泊4日

新興感染症

移動期間を含めておおむね2週間。通常の業務に戻れるかを確認する期間(検査の結果待ちなど)を必要に応じて設け、派遣期間に含める

移動は原則として公共交通機関を使うとされています(令和7年12月の一部改正)。島根県の派遣実施要領は、派遣期間と活動内容を派遣のたびに県が定めるとしています。単発で感染症が発生している施設に入るときに確かめることは「看護師が単発で複数の施設に入るときの感染対策」の6章にまとめています。

この章の出典

  • 厚生労働省「令和6年度からの災害支援ナースの仕組み」
  • 厚生労働省「災害支援ナース活動要領」、同一部改正
  • 島根県「災害支援ナース派遣実施要領」(令和7年3月25日)

5. 費用と補償

先に答えを置きます。派遣の費用は、派遣を要請した都道府県が支弁します。都道府県は活動中の事故に備えて傷害保険に入り、災害支援ナース本人には賠償責任保険への加入が望ましいとされています。

費用

場合

活動要領の記載

原則

協定にもとづき、派遣を要請した都道府県が支弁する

災害救助法の救助と認められる場合

派遣を要請した都道府県は、被災都道府県に求償できる。国への支弁の要請もできる

感染症法の医療措置協定を結んだ施設からの派遣

都道府県が支弁し、国が補助する

厚生労働省の資料は、派遣にかかる実費は協定を結んだ施設がいったん負担し、後日、都道府県に請求する流れを示しています。

補償

種類

活動要領の記載

傷害保険

都道府県は、看護支援活動中(出発地と被災地等との移動を含む)の事故等に備えて加入する

賠償責任保険

災害支援ナースは、第三者に損害を与えた場合に備え、災害等の発生時の活動も対象となる賠償責任保険への加入が望ましい

活動要領には、労災についての記載はありません。派遣中の勤務の扱い(所属施設の業務として行くのか)や手当は、協定と所属施設の決まりで確認してください。

派遣の前に所属施設と確かめておく項目は、次のとおりです。

1. 派遣の期間と、移動を含めた日程
2. 派遣中の勤務の扱い(所属施設の業務として行くのか、休暇の扱いか)
3. 手当・旅費の扱い
4. 都道府県の傷害保険の対象(移動中を含むか)と、事故のときの連絡先
5. 自分の賠償責任保険が、災害時の活動も対象にしているか

看護職賠償責任保険の仕組み(誰が入れるか、何が対象か)は「看護師の賠償責任保険は必要?」にまとめています。自分の保険が災害時の活動も対象にしているかは、保険の約款で確かめる項目です。

この章の出典

  • 厚生労働省「災害支援ナース活動要領」(令和6年4月1日)
  • 厚生労働省「令和6年度からの災害支援ナースの仕組み」

6. 所属施設がない場合(単発・離職中)

先に答えを置きます。派遣は所属施設との協定が前提ですが、活動要領は、所属施設がない場合について、都道府県が直接雇用するか、都道府県看護協会が雇用して協定を結ぶ方法を示しています。

活動要領の記載

活動要領は、所属施設がない災害支援ナースについて、次の2つの方法を挙げています。

方法

内容

都道府県が直接雇用する

都道府県が災害支援ナースを雇用して派遣する

都道府県看護協会が雇用する

都道府県看護協会が雇用し、都道府県と協定を結ぶ

令和6年4月の活動要領は、登録内容の変更の届出を「所属施設がない場合は本人」から都道府県を通じて行うとしています。令和7年12月の一部改正(令和8年4月1日から適用)では、登録内容に変更が生じたときは本人がEMIS上の情報を更新するとされています(3章)。手続きの窓口は、都道府県に確認してください。

研修の申込み

広島県の募集要項は、申込みを施設単位としたうえで、潜在看護師のみ個人での申込が可能としています。単発の勤務だけで働いている人や、離職中の人が研修を受けたい場合は、次の順に確かめると整理できます。

1. 住んでいる(働く)都道府県の募集要項に、個人の申込みの枠があるか
2. その枠の対象(潜在看護師など)に、自分が入るか
3. 修了後、派遣の協定を誰と結ぶことになるか
   (都道府県の直接雇用か、都道府県看護協会か)
4. 単発で働いている施設を「所属施設」として扱えるか

ブランクのある看護師の復職の道筋(ナースセンターの届出制度や復職支援研修)は「ブランクのある看護師の復職ガイド」にまとめています。

この章の出典

  • 厚生労働省「災害支援ナース活動要領」(令和6年4月1日)
  • 「令和8年度 災害支援ナース養成研修 募集要項」(広島県看護協会掲載)

7. DMAT・災害ボランティアとの違い

先に答えを置きます。DMATは、災害の急性期に活動する医療チームです。災害支援ナースとは、活動の時期と単位が違います。

比べる点

災害支援ナース

DMAT

単位

看護職員の個人(協定を結んだ施設から派遣)

医師・看護師・業務調整員のチーム

活動の時期

大規模自然災害では発災後3日以降からおおむね1か月(個々は原則3泊4日)

急性期(おおむね48時間以内)

主な活動

地域住民の健康を守る看護と、現地の看護職員の支援

災害急性期の医療

大阪府はDMATを「災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム」と説明しています。神奈川県は、災害支援ナースがDMATやDPATと同様に「災害・感染症医療業務従事者」として位置づけられたと説明しています(2章)。

活動要領は、災害支援ナースの派遣(協定・費用の支弁・都道府県の傷害保険)について定めたもので、個人が災害ボランティアとして被災地に入る場合については書いていません。ボランティアとして看護の活動をする場合の保険や受け入れの窓口は、受け入れ側の案内で確認してください。

この章の出典

  • 大阪府「災害派遣医療チーム(DMAT)の設置について」
  • 神奈川県「災害支援ナースについて」
  • 厚生労働省「災害支援ナース活動要領」

8. タメシビで想定していること

タメシビは、看護師・准看護師が、施設と直接雇用契約を結んで1日単位で働けるスポット勤務サービスです。応募後、施設が内容を確認して勤務が確定します(事前の面接・書類選考はありません)。求人には、業務内容、必要な経験、持ち物、当日の流れを明示する方針です。

災害支援ナースの研修・登録・派遣は、都道府県と所属施設の協定にもとづく仕組みで、タメシビの単発の勤務とは別のものです。災害支援ナースとして活動するかどうかは、所属施設や都道府県と相談して決めることになります。

タメシビは2026年内のサービス開始に向けて準備中で、どの地域・どの種類の求人が掲載されるかは、これから決まります。

よくある質問

災害支援ナースになるにはどうすればよいですか

厚生労働省医政局が実施する養成研修を修了し、登録されることが必要です。研修の申込みは、広島県の例では施設単位で、看護管理者が行います(3章)。

准看護師も災害支援ナースになれますか

活動要領は「看護職員」としており、准看護師を含むかを書いていません。広島県の募集要項にも職種の要件は書かれていません(3章)。都道府県の募集要項か、看護管理者に確認してください。

登録の更新はありますか

5年ごとに更新です。有効期間中に更新を目的とした研修を1回以上受講しないと、更新されません(3章)。

派遣はどのくらいの期間ですか

大規模自然災害では、移動時間を含めて原則3泊4日、新興感染症ではおおむね2週間が目安です(4章)。

派遣中のけがは補償されますか

都道府県は、移動を含む看護支援活動中の事故等に備えて傷害保険に加入するとされています(5章)。労災についての記載は活動要領にありません。

所属施設がなくても災害支援ナースになれますか

活動要領は、所属施設がない場合に、都道府県が直接雇用するか、都道府県看護協会が雇用する方法を示しています。広島県の募集要項では、潜在看護師のみ個人で研修に申し込めます(6章)。

旧制度で登録していましたが、そのまま有効ですか

令和7年12月の一部改正は、令和5年度以降の研修修了者が申請により登録できるとしています(2章)。それより前の登録の扱いは、所属施設か都道府県に確認してください。

DMATとはどう違いますか

DMATは医師・看護師・業務調整員のチームで、急性期(おおむね48時間以内)に活動します。災害支援ナースは個人単位で、大規模自然災害では発災後3日以降からの活動が目安です(7章)。

まとめ

災害支援ナースは、厚生労働省医政局の養成研修を修了し、登録された看護職員の総称で、令和6年度から医療法上の災害・感染症医療業務従事者になりました。登録は5年ごとに更新し、派遣は都道府県と所属施設の協定にもとづいて都道府県の要請で行われます。

期間の目安は大規模自然災害で原則3泊4日、新興感染症でおおむね2週間です。費用は都道府県が支弁し、都道府県が傷害保険に加入します。所属施設がない場合の方法も活動要領に示されているため、単発で働いている人や離職中の人は、都道府県の募集要項と担当窓口で確認してください。

この記事の主な一次情報

  • 医療法(昭和23年法律第205号)30条の12の2・30条の12の6
  • 厚生労働省「災害支援ナース活動要領について」(令和6年3月29日 医政地発0329第3号・医政看発0329第1号)
  • 厚生労働省「災害支援ナース活動要領の一部改正について」(令和7年12月23日 医政地発1223第1号・医政看発1223第1号)
  • 厚生労働省「令和6年度からの災害支援ナースの仕組み(災害・新興感染症対応)」
  • 神奈川県「災害支援ナースについて」
  • 「令和8年度 災害支援ナース養成研修 募集要項」(広島県看護協会掲載)
  • 島根県「災害支援ナース派遣実施要領」(令和7年3月25日)
  • 大阪府「災害派遣医療チーム(DMAT)の設置について」

※2026年10月8日に確認。活動要領と募集要項は改正・更新されることがあります。この記事は制度の紹介であり、個別の方が登録・派遣の対象になるかについて判断を示すものではありません。賃金の相場は扱っていません。

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