透析室には、看護師と臨床工学技士という2つの職種がいます。そして穿刺は、どちらの職種も法令上行うことができます。
だからこそ、実際に誰が穿刺するかは施設によって違います。単発で入る日に最初に確認すべきなのは、この分担です。この記事では、その根拠を条文から整理しました。
この記事の結論
- 臨床工学技士法施行令1条2号は、臨床工学技士が行える行為として「血液浄化装置の穿刺針その他の先端部のシャント、表在化された動脈若しくは表在静脈への接続」を挙げています(2章)。
- つまり、穿刺を誰が行うかは法令が決めているのではなく、施設の体制で決まります(3章)。
- 単発で入る日は、穿刺・返血・機械の操作・観察のそれぞれを誰が担当するのかを、始業前に確認してください(3章)。
- 透析はクール制で時間が決まっているため、その日の流れに遅れが出ると全体に影響します。時間の組み立てを事前に把握しておくと動きやすくなります(4章)。
読みたい箇所から確認する
- 1. 透析室には2つの職種がいる
- 2. 穿刺は、どちらの職種も行える
- 3. だから「その日の分担」を最初に確認する
- 4. 1日の流れとクール制
- 5. 単発が難しいと言われる理由と、それでも求人が出る背景
- 6. 求人票で確認したいこと
- 7. 「きつい」と言われる理由と、向いている場合
- 8. タメシビで想定していること
- よくある質問
1. 透析室には2つの職種がいる
透析室で働く職種のうち、業務が大きく重なるのが看護師と臨床工学技士です。それぞれの根拠となる条文を並べます。
看護師
保健師助産師看護師法5条は、看護師を「傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者」と定義しています。透析における穿刺や返血は、この「診療の補助」にあたる行為として、医師の指示のもとで行われます。
同法37条は、看護師と准看護師の双方について、主治の医師または歯科医師の指示があった場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、その他医師または歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない、と定めています。
臨床工学技士
臨床工学技士法2条2項は、臨床工学技士を次のように定義しています。
この法律で「臨床工学技士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、臨床工学技士の名称を用いて、医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作(生命維持管理装置の先端部の身体への接続又は身体からの除去であつて政令で定めるものを含む。以下同じ。)及び保守点検を行うことを業とする者をいう。
ここで言う「生命維持管理装置」は、同条1項が「呼吸、循環又は代謝の機能の一部を代替し、又は補助することが目的とされている装置」と定義しています。透析装置はこれにあたります。
そして同法37条1項は、臨床工学技士が保健師助産師看護師法31条1項及び32条の規定にかかわらず、診療の補助として生命維持管理装置の操作等を行うことを業とすることができると定めています。
あわせて同法38条は、次のように定めています。
臨床工学技士は、医師の具体的な指示を受けなければ、厚生労働省令で定める生命維持管理装置の操作を行つてはならない。
この章の出典
- 保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第5条・第37条 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000203
- 臨床工学技士法(昭和62年法律第60号)第2条・第37条 https://laws.e-gov.go.jp/law/362AC0000000060
2. 穿刺は、どちらの職種も行える
1章で引いた臨床工学技士法2条2項の括弧書きに「政令で定めるもの」とありました。その政令が、臨床工学技士法施行令(昭和63年政令第21号)です。
同令1条は、次のように定めています。
臨床工学技士法第二条第二項の政令で定める生命維持管理装置の先端部の身体への接続又は身体からの除去は、次のとおりとする。
一 人工呼吸装置のマウスピース、鼻カニューレその他の先端部の身体への接続又は身体からの除去(略)
二 血液浄化装置の穿刺針その他の先端部のシャント、表在化された動脈若しくは表在静脈への接続又はシャント、表在化された動脈若しくは表在静脈からの除去
三 生命維持管理装置の導出電極の皮膚への接続又は皮膚からの除去
2号が、透析の穿刺と返血にあたる部分です。臨床工学技士は、医師の指示のもとで、シャントや表在化された動脈への穿刺を行うことができます。
看護師も、診療の補助として医師の指示のもとで同じ行為を行います。つまり、この領域は法令上、両方の職種が担いうるものとして設計されています。
令和3年に業務の範囲が広がっている
臨床工学技士の業務範囲は、令和3年の法令改正で広がりました。上に引いた施行令1条2号の「表在化された動脈」も、この改正で加わったものです。
厚生労働省の資料は、新たに行えることとされた業務として、手術室等で生命維持管理装置や輸液ポンプ・シリンジポンプに接続するための静脈路の確保、それらを用いた薬剤の投与、静脈路の抜針と止血、そして血液浄化時の動脈表在化部位への穿刺などを挙げています。いずれも研修の受講が要件とされています。
この分野は、職種間の業務の線引きが動いている領域です。 数年前の情報が現在の運用と違うことがあるため、施設ごとの確認がいっそう重要になります。
この章の出典
- 臨床工学技士法施行令(昭和63年政令第21号)第1条 https://laws.e-gov.go.jp/law/363CO0000000021
- 現行制度の下で実施可能な業務範囲について(タスク・シフト/シェア関係、厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000709446.pdf
3. だから「その日の分担」を最初に確認する
法令が両方の職種に道を開いている以上、誰が何をするかは施設が決めています。 同じ「透析室の看護師」という求人でも、担当する範囲がまったく違うことがあります。
考えられる分担の形は、おおむね次の3つです。
穿刺・返血 | 機械の操作・プライミング | 観察・記録 | |
|---|---|---|---|
看護師が中心の施設 | 看護師 | 臨床工学技士 | 看護師 |
臨床工学技士が中心の施設 | 臨床工学技士 | 臨床工学技士 | 看護師 |
両方で分担する施設 | その日の担当による | 臨床工学技士 | 看護師 |
これは例であって、施設ごとにもっと細かく分かれます。 たとえば「基本は臨床工学技士だが、穿刺が難しい方は看護師が担当する」「新規の患者は看護師が担当する」といった運用もあります。
単発で入る日は、次の点を始業前に確認してください。
1. 穿刺と返血を、自分が担当するかどうか
2. 担当する場合、何人分を担当するか
3. 機械の操作・プライミング・アラーム対応の担当
4. 観察と記録の担当、記録の様式
5. 判断に迷ったときの相談先(看護師の責任者か、臨床工学技士か、医師か)求人票に「穿刺あり」「穿刺なし」と書かれていないことは珍しくありません。 応募前に確認しておくと、当日の見通しが立ちます。
→ 当日の担当範囲を確認してから応募できる単発の求人を、公開時にお知らせします。LINEで先行登録(無料)を受け付けています。
4. 1日の流れとクール制
透析室は、決まった時間帯ごとに患者が入れ替わる「クール制」で動いている施設が多くあります。施設によって時刻も回数も変わりますが、おおむね次のような形です。
始業前
機械のプライミング、物品の準備、その日の患者の確認
↓
第1クール(午前)
来院・体重測定 → 問診・バイタル → 穿刺・開始
→ 経過の観察 → 終了・返血 → 止血 → 体重測定 → 退室
↓
入れ替え
ベッドと回路の片づけ、次のクールの準備
↓
第2クール(午後)
同じ流れを繰り返す
↓
(施設により第3クール・夜間クール)
↓
終業前
記録の完了、翌日の準備、申し送りこの各工程を誰が担当するかは、施設によって決まっています(3章)。自分の担当は始業前に確認してください。
クール制の特徴は、時間が決まっていることです。 開始が遅れると終了も遅れ、次のクールの入れ替えにも影響します。単発で入る日は、この時間の組み立てを事前に把握しておくと動きやすくなります。
確認しておきたいのは、次の点です。
- その日のクールの数と、各クールの開始・終了の時刻
- 自分が担当する患者の人数
- 入れ替えの作業に入るかどうか
- 送迎の対応があるか(送迎を行っている施設があります)
5. 単発が難しいと言われる理由と、それでも求人が出る背景
透析は、単発の勤務がなじみにくいと言われる分野です。理由は主に次の3点です。
1. 患者ごとの情報が積み上がっている
シャントの状態、穿刺の位置、体重の目標値、除水の設定、普段の血圧の傾向 ―― これらは継続して関わる中で把握されていくものです。その日だけ入る看護師が短時間で把握するのは簡単ではありません。
2. 時間が決まっている
4章で見たとおり、クールの時間は決まっています。開始が遅れれば、その日のあとの工程にも影響します。
3. 機器と回路の扱いが施設によって違う
使っている装置のメーカーや型、回路の組み方、アラームへの対応の手順は施設ごとに異なります。
それでも求人が出る背景
一方で、透析室はクールの時刻が決まっているため、その時間帯に必要な人数が揃っていることが前提になります。職員の急な欠勤や、クールが重なる時間帯の応援など、1日単位で人が必要になる場面はあります。
求人が出る場合、次のような条件が付くことがあります。
- 透析の経験を応募条件にしている
- 穿刺を担当しない前提で、観察と記録を中心にしている
- 同じ施設に複数回入ることを前提にしている
「透析未経験でも可」と書かれている求人は、穿刺を担当しない形である可能性があります。 業務内容を確認してください。
6. 求人票で確認したいこと
5章までに挙げた点を、求人票を読むときと問い合わせのときに使える形に落としたものです。
業務の分担
- □ 穿刺・返血を担当するか(3章)
- □ 担当する場合、何人分か
- □ 機械の操作・プライミング・アラーム対応の担当
- □ 観察と記録の担当、記録の様式
体制
- □ その日の看護職と臨床工学技士の人数
- □ 判断に迷ったときの相談先(看護師の責任者、臨床工学技士、医師)
- □ 医師が在室している時間帯
時間
- □ クールの数と、各クールの開始・終了の時刻
- □ 勤務の開始時刻と終了時刻、申し送りの時間の扱い
- □ 入れ替えの作業に入るかどうか
- □ 送迎の対応があるか
応募条件・そのほか
- □ 透析の経験が条件になっているか、何年か
- □ 未経験可の場合、担当する業務の範囲
- □ 雇用主、賃金の支払日と支払方法、交通費の扱い
- □ 持ち物と服装
応募前の確認と当日の持ち物は「初めての看護師単発バイト|求人選び・持ち物・当日の流れ」にまとめています。
なお、透析を行う施設は、病院の場合と診療所の場合があります。同じ「透析クリニック」という言葉でも、病床の有無によって医療法施行規則の適用が変わります。 外来のみを行う診療所については、「クリニック外来の看護師の仕事内容」の2章で扱ったとおり、同規則19条・21条の2を確認した範囲では看護職員の員数の標準を定めた規定が見当たりません。いずれにしても、当日の体制は求人票と事前の説明で確認することになります。
7. 「きつい」と言われる理由と、向いている場合
「きつい」と言われる理由と、その確認方法
透析室の仕事について「きつい」と語られるとき、理由は次のどれかに集約されることが多いものです。いずれも、応募前に確認すれば見通しが立ちます。
- 穿刺の担当範囲が事前に分からない。 求人票に書かれていないことがあります。応募前に確認してください(3章)。
- 時間に追われる。 クールの時間が決まっているため、遅れが出ると全体に影響します。時刻の組み立てを事前に把握しておくと落ち着いて動けます(4章)。
- 患者の情報を短時間で把握する必要がある。 その日の担当分だけでも、事前にどこまで情報を見られるかを確認してください。
- 機器の扱いが施設によって違う。 装置の型や手順の違いは、当日に教えてもらうことになります。説明の時間があるかを確認してください。
向いている場合
- 透析の経験があり、手順が身についている場合
- 同じ患者と継続的に関わる働き方に関心がある場合
- クールの時刻が決まっている働き方に関心がある場合
- 医療機器の扱いに抵抗がない場合
未経験から関わりたい場合
透析の経験がない状態で単発の求人に応募するのは、この分野では難しい面があります。求人の多くが経験を条件にしているためです。
関心がある場合は、次のような進め方があります。
- 穿刺を担当しない前提の求人(観察と記録が中心)から探す
- 非常勤として、同じ施設に継続して入る形で始める
- クリニック外来など、医師が在室する環境の単発勤務から経験を広げる
同じ「1日単位」でも、施設の種類が変わると業務はかなり違います。ほかの施設の記事もあわせてご覧ください。
単発勤務の全体像は「看護師の単発バイト完全ガイド|働ける場所・始め方・求人票の見方」にまとめています。
8. タメシビで想定していること
タメシビは、看護師・准看護師が、施設と直接雇用契約を結んで1日単位で働けるスポット勤務サービスです。応募後、施設が内容を確認して勤務が確定します(事前の面接・書類選考はありません)。求人には、業務内容、必要な経験、持ち物、当日の流れを明示する方針です。
透析は、同じ職種の求人でも担当する範囲が施設によって大きく変わる分野です。穿刺を担当するのかどうかが応募前に分かる形を整えることを、サービスの前提に置いています。
タメシビは2026年内のサービス開始に向けて準備中で、どの地域・どの種類の求人が掲載されるかは、これから決まります。現時点でこの施設種別の求人の掲載をお約束するものではありません。
よくある質問
穿刺は看護師がやるのですか、臨床工学技士がやるのですか
施設によります。臨床工学技士法施行令1条2号は、臨床工学技士が血液浄化装置の穿刺針をシャント等に接続することを行える行為として挙げており、看護師も診療の補助として医師の指示のもとで行います(2章)。法令が決めているのではなく、施設が体制として決めています。
透析未経験でも単発で入れますか
求人の応募条件によります。経験を条件にしている求人が多い分野です。「未経験可」と書かれている場合、穿刺を担当しない形である可能性があります。業務内容を確認してください(5章)。
准看護師でも応募できますか
求人の応募条件によります。保助看法37条は、看護師と准看護師の双方について、主治の医師または歯科医師の指示があった場合を除くほか一定の行為を行ってはならないと定めており、この点は資格による違いではありません。実際の応募可否は求人ごとに確認してください。詳細は「准看護師の単発バイト」にまとめています。
何人の患者を担当しますか
施設の体制とその日の人数によります。求人票に記載がなければ、問い合わせで確認してください(6章)。
夜間の透析もありますか
夜間クールを設けている施設があります。勤務時間が夜になるため、クールの数と時刻を確認してください(4章)。
残業は多いですか
クールの進み方によります。終了が遅れると退室と片づけも後ろにずれます。終業時刻の目安と、延びた場合の扱いを確認してください。
臨床工学技士がいない日もありますか
施設の体制によります。臨床工学技士が在籍していない施設や、曜日によって勤務していない施設もあります。その場合、機械の操作を誰が行うかが変わります。当日の体制を確認してください。
腹膜透析(CAPD)も同じですか
異なります。この記事は血液透析を行う施設を前提にしています。腹膜透析は在宅で行うもので、関わり方が変わります。
まとめ
透析室では、看護師と臨床工学技士の業務が法令上重なっています。臨床工学技士法施行令1条2号は、臨床工学技士が血液浄化装置の穿刺針をシャントや表在化された動脈に接続することを行える行為として挙げており、看護師も診療の補助として同じ行為を行います。
だから、誰が穿刺するかは施設が決めています。 同じ「透析室の看護師」という求人でも、担当する範囲がまったく違うことがあります。
単発で入る日に効くのは、穿刺・返血を担当するかどうか、何人分か、機械の操作は誰が行うか、そして相談先の4点です。クール制で時間が決まっている分野なので、時刻の組み立てもあわせて確認しておくと落ち着いて動けます。
この記事の主な一次情報
法令・政令
- 保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第5条・第37条 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000203
- 臨床工学技士法(昭和62年法律第60号)第2条・第37条・第38条 https://laws.e-gov.go.jp/law/362AC0000000060
- 臨床工学技士法施行令(昭和63年政令第21号)第1条 https://laws.e-gov.go.jp/law/363CO0000000021
厚生労働省の資料
- 現行制度の下で実施可能な業務範囲について(タスク・シフト/シェア関係) https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000709446.pdf
※いずれも2026年9月25日に確認(2026年9月29日に本文を見直し)。法令は改正されることがあります。この記事は条文と公的資料の紹介であり、個別の行為の可否や個別の施設の運用についての判断を示すものではありません。
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タメシビは、看護師が1日単位で施設と直接雇用契約を結んで働けるスポット勤務サービスです。応募後、施設が内容を確認して勤務が確定します(事前の面接・書類選考はありません)。求人には業務内容、必要な経験、持ち物、当日の流れを明示し、働いてから、その職場で続けるかをご自身で選べます。看護師・准看護師の登録料・利用料は無料です。
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