「扶養内で働きたいのに、時給が高いからすぐ上限に届いてしまう」。看護師の扶養内には、この職種ならではの窮屈さがあります。
そして2026年は、壁の数字そのものが動いた年です。「103万円の壁」は2024年分までの数字で、2026年の収入には当てはまりません。2025年分の「160万円」も、2026年分には当てはまりません。さらに10月には、社会保険の「106万円の壁」から金額の要件がなくなりました。
看護師が扶養内で働ける上限は、2026年分の収入では130万円です。正確には、健康保険の被扶養者でいられる年間収入が130万円未満、夫や親の税の扶養に入れるのが給与収入136万円以下、自分に所得税がかかり始めるのが178万円超になります。実務上いちばん影響が大きいのは130万円で、これ以上になると健康保険料と国民年金保険料の負担が新しく発生します。時給2,000円の看護師なら、130万円に届くのは年間およそ650時間、週にならすと12〜13時間です。
この記事では、2026年の数字を国税庁・厚生労働省・日本年金機構の資料で確認したうえで、時給の高い看護師が何時間でその壁に届くのか、単発バイトを掛け持ちしたとき何が合算されて何が合算されないのかを扱います。
30秒でわかる結論
- 2026年分の壁は4つです。178万円(自分に所得税がかかり始める)/136万円(夫・親の税の扶養に入れる上限)/130万円(健康保険の扶養を外れる)/住民税は市区町村ごとの別のライン(1章)
- 実務でいちばん重いのは130万円です。税の壁を超えても控除が減るだけですが、130万円以上になって健康保険の扶養を外れると、保険料の負担が新しく発生します(3章)
- 136万円の重さは、誰の扶養かで違います。夫の配偶者控除は配偶者特別控除に切り替わって一定の範囲までは減りませんが、親の扶養控除には受け皿がなく、1円超えるとその年の分が全額なくなります(1-2)
- 「106万円の壁」は2026年10月に金額の要件がなくなりました。なくなったのは月額8.8万円という賃金の要件だけで、週20時間・学生でない・2か月超の見込み・勤務先の従業員数、という要件は残っています(4章)
- 社会保険に入るかどうかの判定は、勤務先ごとに行われます。掛け持ちの労働時間は合算されません。ところが130万円の判定は全部合算します。この非対称が掛け持ちの落とし穴です(5章)
- 交通費は、税の年収には入らず、社会保険の130万円には入る前提で見ます(6章)
まず、あなたが見る数字はこの3つのどれかです
130万円は「健康保険の扶養」の話です。扶養に入れるのは、夫(または親)が勤務先の健康保険・共済に入っている場合だけなので、そうでない人には130万円の壁はありません。
夫(親)が入っている保険 | あなたに130万円の壁は |
|---|---|
会社の健康保険・組合健保・共済 | あります。この記事の中心はここです |
国民健康保険(自営業・フリーランスなど) | ありません。国保に扶養という仕組みがないため、あなたはもともと国保の被保険者です。見るのは税の136万円・178万円だけ |
誰の扶養にも入っていない | ありません。178万円(自分の所得税)と、住民税のライン(1-4)を見てください |
夫が国民健康保険なら、働き方を抑える理由は「健康保険の扶養を外れるから」ではなく「世帯の国保料が増えるから」に変わります。国保料は前年の所得に応じて世帯ごとに計算されるので、130万円という区切りはありません。
あなたはどこから読む?
いま知りたいこと | まず読む章 |
|---|---|
結局いくらまで働けるのか | |
自分の時給だと何時間まで働けるのか | |
130万円を超えそう・超えたかもしれない | |
夫(親)の健康保険が「◯◯健康保険組合」だ | |
勤務先で社会保険に入ることになりそう | |
単発バイトを複数の職場で掛け持ちしている | |
単発だけで働いていて、確定申告が要るか知りたい | |
交通費や夜勤手当が年収に入るのか知りたい | |
年末が近く、あと何時間働けるか計算したい | |
扶養を外れて働くかどうか迷っている |
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1. 看護師が扶養内で働けるのはいくらまで?2026年の壁は178万・136万・130万
壁の話がわかりにくいのは、税金の壁と社会保険の壁が別々に立っていて、金額も根拠も所管する役所も違うからです。まず全体像を1枚にします。
金額 | 何が起きるか | 誰の話か | 種類 |
|---|---|---|---|
市区町村で異なる | 自分に住民税がかかり始める | 自分 | 税(1-4) |
130万円以上 | 健康保険の扶養を外れる。自分で保険料を払う | 自分 | 社会保険 |
136万円超 | 夫の配偶者控除が配偶者特別控除に切り替わる(一定の範囲までは控除額は変わらない。1-2) | 家族 | 税 |
136万円超 | 親の扶養控除は、1円でも超えるとその年の分が全額なくなる(19歳以上23歳未満は197万円まで段階的に残る) | 家族 | 税 |
178万円超 | 自分に所得税がかかり始める | 自分 | 税 |
207万円超 | 配偶者特別控除がなくなる | 家族 | 税 |
60歳以上の方と、障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害がある方は、130万円ではなく180万円です。19歳以上23歳未満(配偶者を除く)の方は150万円という基準があります(3-4)。
金額の大きさと影響の重さは一致しません。いちばん先に効いてくるのは、金額としては真ん中あたりにある130万円です。
1-1. 178万円 — 自分に所得税がかかり始めるライン
2026年分(令和8年分)から、給与収入が178万円までなら所得税はかかりません。
内訳は、給与所得控除の最低保障額74万円と、基礎控除104万円です。給与収入178万円から給与所得控除74万円を引くと所得は104万円、そこから基礎控除104万円を引くと、課税される所得はゼロになります。
国税庁も、2026年分(令和8年分)はパート収入が178万円以下なら所得税はかからない、と説明しています。
ここ3年で3回動いているので、年分ごとに整理します。
収入があった年 | 所得税がかかり始める給与収入 | 内訳 |
|---|---|---|
2024年(令和6年)分まで | 103万円 | 給与所得控除55万円+基礎控除48万円 |
2025年(令和7年)分 | 160万円 | 給与所得控除65万円+基礎控除95万円 |
2026年(令和8年)分 | 178万円 | 給与所得控除74万円+基礎控除104万円 |
インターネット上の記事で「103万円の壁」と書かれているものは2024年分までの、「160万円」と書かれているものは2025年分の説明です。今年の収入について調べているなら、178万円を見てください。
注意 この改正(令和8年度税制改正)は2026年12月1日に施行され、2026年分の所得税から適用されます。ただし国税庁は、2026年11月までの源泉徴収には変更がないとしており、毎月の給与から引かれる所得税の額は11月まで改正前の税額表で計算されます。差額は12月の年末調整で精算されます。給与明細で所得税が引かれていても、それは壁を超えた印ではありません(5章)。
1-2. 136万円 — 夫・親の扶養(税)に入れるライン
自分の税金ではなく、夫や親の税金が変わるラインです。2026年分から、配偶者控除・扶養控除の対象になる人の合計所得金額の要件は62万円以下、給与収入に直すと136万円以下になりました(2025年分は123万円、2024年分までは103万円)。
ここでいう合計所得金額とは、収入から給与所得控除などを引いたあとの金額のことです。給与だけで働いているなら「年収 − 給与所得控除」がそれにあたります。
夫の扶養に入っている場合、136万円を超えてもいきなり全部なくなるわけではありません。配偶者特別控除に切り替わり、給与収入207万円までは段階的に控除が残ります。
自分の給与収入(2026年分) | 夫が受けられる控除 |
|---|---|
136万円以下 | 配偶者控除(38万円) |
136万円超〜207万円以下 | 配偶者特別控除(あなたの合計所得金額が95万円以下の範囲は満額の38万円。それを超えると段階的に減る) |
207万円超 | なし |
(控除額は、夫の合計所得金額が900万円以下の場合)
配偶者控除・配偶者特別控除には、受ける側(夫など)の所得制限があります。夫の合計所得金額が1,000万円を超えると、妻の収入がいくらであっても受けられません。900万円を超えると控除額が段階的に減ります。
#### 親の扶養に入っている場合、136万円は「崖」になります
配偶者控除には配偶者特別控除という受け皿がありますが、扶養控除にはそれがありません。親の扶養に入っている看護師が136万円を1円超えると、親の控除は段階的に減るのではなく、その年の分が全額なくなります。
例外は、19歳以上23歳未満の場合です。2025年分に新設された特定親族特別控除があり、給与収入197万円まで親の控除が段階的に残ります。看護学生の子がアルバイトをしている家庭も、ここに当てはまります。
この年齢を外れると受け皿はありません。実家暮らしで親の扶養に入っている方は、配偶者の場合と同じ感覚で136万円を扱わないでください。
1-3. 130万円 — 健康保険の扶養を外れるライン
ここが実務上いちばん重い壁です。税の壁を超えても控除が減るだけですが、130万円以上になって健康保険の扶養を外れると、それまでゼロだった保険料の負担が発生します。
根拠は1977年(昭和52年)の通知(保発第9号)で、「認定対象者の年間収入が一三〇万円未満(認定対象者が六〇歳以上の者である場合又は概ね厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者である場合にあっては一八〇万円未満)」であり、同居している場合は「かつ、被保険者の年間収入の二分の一未満である場合は、原則として被扶養者に該当するものとすること」と定めています。
条文の言葉は「130万円未満」です。130万円ちょうどは「未満」ではないので、扶養から外れます。目標を立てるなら、129万円台までを上限として置いてください。
もうひとつ、130万円を超えると増える負担が年金にもあります。健康保険の扶養に入っている人(被扶養者)のうち、20歳以上60歳未満で会社員・公務員の配偶者にあたる人は、国民年金の第3号被保険者という区分になります。保険料を自分で払わなくても、払ったものとして年金の記録が積まれる区分です。扶養を外れるとこの区分を失い、第1号被保険者(自分で国民年金保険料を払う区分)に変わります。
この130万円は、税の改正とは無関係に、いまも130万円のままです。数え方には独特のルールがあるので、3章で詳しく扱います。
1-4. 住民税は、別のラインで別の年にかかる
住民税には非課税限度額という仕組みがあり、これは所得税の178万円とは別に決まります。しかも計算に使う所得は前年のものです。
非課税限度額は全国共通ではなく、生活保護の級地区分(1級地・2級地・3級地)によって差があります。住民税がいくらからかかり始めるかは、お住まいの市区町村の案内で確認してください。
この章の出典
- 国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2026kaisei.pdf
- 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2026kiso/index.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1800 パート収入はいくらまで所得税がかからないか https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1800.htm / No.1199 基礎控除 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1191 配偶者控除 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm / No.1195 配偶者特別控除 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
- 厚生労働省「収入がある者についての被扶養者の認定について」(昭和52年4月6日 保発第9号・庁保発第9号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb0189&dataType=1&pageNo=1
- 総務省「令和7年度税制改正(個人住民税)」 https://www.soumu.go.jp/main_content/001002521.pdf
- 所得税法(昭和40年法律第33号)第83条の2(配偶者特別控除) https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 地方税法(昭和25年法律第226号)第295条 / 地方税法施行令(昭和25年政令第245号)第47条の3 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000245
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2. 時給別・扶養内パートで働ける時間 — 看護師が他職種より早く壁にぶつかる理由
壁の金額は職種を問わず同じです。違うのは、そこに到達するまでの時間です。
厚生労働省は社会保険の適用拡大に関するQ&Aで、時給1,016円以上で週20時間働けば月額8.8万円の要件を自動的に満たすため、この要件を意識する必要がなくなった、と説明しています。裏を返せば、年収の壁の設計は最低賃金に近い時給水準を前提に置いています。看護師のパート・単発ではその水準より高い時給の求人も見られ、時給が高いほど、同じ壁に、より短い労働時間で届くことになります。
2-1. 時給別・壁に届くまでの時間
計算の順番は、こうです。130万円 −(交通費の年額)−(賞与の見込み)−(夜勤手当の見込み)= 時給で稼げる枠。この枠を時給で割ります。130万円には交通費も手当も入るので(6章)、時給で稼げる部分はその分だけ減ります。
下の表は、交通費・賞与・手当がゼロの場合の上限です。実際にはここから減ることを前提に見てください。右端は、往復1,000円の交通費が月8日ぶん発生する(年およそ10万円)と仮定した場合です。
時給 | 130万円に届く年間労働時間 | 週あたり | 月あたりの勤務日数(1日8時間) | 交通費が年10万円ある場合 |
|---|---|---|---|---|
1,500円 | 約867時間 | 約16.7時間 | 約9.0日 | 約800時間 |
1,800円 | 約722時間 | 約13.9時間 | 約7.5日 | 約667時間 |
2,000円 | 約650時間 | 約12.5時間 | 約6.8日 | 約600時間 |
2,200円 | 約591時間 | 約11.4時間 | 約6.2日 | 約545時間 |
2,500円 | 約520時間 | 約10.0時間 | 約5.4日 | 約480時間 |
(130万円 ÷ 時給、週あたりは52週で割った値、月あたりは1日8時間・12か月で割った値。右端は120万円 ÷ 時給)
時給2,000円なら、週2日・1日6時間の勤務でほぼ上限です。時給2,500円なら、月に5日強しか働けません。「扶養内で働きたい」と「もっとシフトに入ってほしいと言われる」が両立しにくいのは、この計算のためです。
上限が小さいほど、シフトを月単位で固定する働き方は不利になります。1日単位で入る日を決められるかどうかが、扶養内では効いてきます(7-3)。
なお136万円(税の扶養)で計算すると、時給2,000円で年680時間、週約13時間になります。130万円と136万円は6万円しか違わないので、夫の扶養に入っている方は実務上は130万円のほうだけ見ておけば足ります(親の扶養に入っている方は、1-2のとおり136万円のほうが崖になるので、両方見てください)。
2-2. 夜勤を入れると、月2回で届くことがある
夜勤は1回あたりの支給額が大きいぶん、壁への到達も早くなります。
夜勤1回の支給額を2万円とすると、130万円÷2万円で年65回、月にならすと約5.4回。3万円なら年43回で月3.6回、4万円なら年32回で月2.7回です。夜勤を中心に組み立てると、扶養内に収まるのは月2〜3回。これは夜勤専従という働き方が成り立つ回数ではありません。
日勤と夜勤を組み合わせる場合は、両方を足して130万円です。日勤で月8万円稼いでいるなら、年間で96万円。夜勤に回せるのは残り34万円で、1回3万円なら年11回、月1回弱しかありません。
2-3. 「扶養内で夜勤」は成立するか
成立します。ただし、扶養内という条件と夜勤という働き方は、設計上あまり相性がよくありません。理由は3つです。
1つ目は、いま見たとおり回数が絞られること。月2〜3回の夜勤では、勤務先が期待する夜勤要員としての役割を果たしにくく、シフトに組み込んでもらえないことがあります。
2つ目は、金額のぶれが大きいこと。日勤のパートなら月ごとの収入は安定しますが、夜勤は1回入るかどうかで数万円動きます。「今月あと1回入れるか」の判断を毎月しなければならず、年末に近づくほど計算が苦しくなります(7章)。
3つ目は、手当の扱いがわかりにくいこと。深夜割増の部分は、社会保険の月額8.8万円の判定からは除外されていました。しかしその8.8万円要件は2026年10月になくなっており(4章)、130万円の判定では割増賃金も含めて数えます。「夜勤手当は年収に入らないのでは」という誤解は、この8.8万円のルールが独り歩きしたものです。130万円には、夜勤手当も深夜割増も入ります(6章)。
夜勤を続けたいなら、扶養を外れて働く選択肢と正面から比べたほうが、結果的に納得のいく形になることがあります(8章)。
この章の出典
- 厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト「適用拡大Q&A」 https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/qa/
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大 Q&A集(令和6年10月施行分)」 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.files/QA0610.pdf
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3. 130万円の壁の数え方 — 扶養内の判定は「今後1年間の見込み」
130万円は、税の壁とは数え方がまるで違います。ここを取り違えると、年の途中で扶養を外れることになります。
3-1. 「今後1年間の見込み」で見る。1月から数え直すのではない
税の壁は1月1日から12月31日までの実績で判定します。130万円は違います。
日本年金機構は、被扶養者(異動)届の説明で次のように書いています。
年間収入とは、過去における収入のことではなく、扶養に該当する時点および、認定された日以降の年間の見込みの収入額のことをいいます。
給与所得等の収入がある場合、月額 108,333円以下。雇用保険等の受給者の場合、日額 3,611円以下であること。
つまり、「これからの12か月でいくら稼ぐ見込みか」で見ます。月額に直すと108,333円(130万円÷12)、雇用保険の給付を受けているなら日額3,611円(130万円÷360)が基準です。
年の前半をセーブして後半に働き方を変えた場合、暦年の合計が130万円未満でも、月額108,333円を超える状態が続けば扶養を外れる判断になり得ます。逆に、暦年の合計が130万円以上になっても、それが一時的なものなら扶養が続くことがあります(このあと3-4で扱います)。
厚生労働省の事務連絡も、「被扶養者の過去の収入、現時点の収入又は将来の収入の見込みなどから、今後1年間の収入を見込むもの」とし、直近3か月を年換算して130万円以上になる場合でも「総合的に将来収入の見込みを判断すること」としています。
3-2. まず、夫(親)の健康保険が「協会けんぽ」か「組合健保」かを確認する
130万円の数え方は、あなたが入っている健康保険の運営者(保険者)が決めます。この記事で引用している通知やQ&Aは国が示した基準ですが、実際の認定を行うのはそれぞれの保険者です。
見分け方は簡単です。マイナポータルの「健康保険資格情報」か、資格確認書・保険証に書かれた保険者名称を見てください。「全国健康保険協会 ○○支部」なら協会けんぽ、「○○健康保険組合」なら組合健保、「○○共済組合」なら共済です。
協会けんぽ以外の場合、次の点が違うことがあります。
確認する点 | 保険者によって違うことがある点 |
|---|---|
判定に使う1年の区切り | 1〜12月/4月〜翌3月/認定日から1年など |
月額での判定 | 直近の月収をどう見るか |
事業主の証明(3-4)の特例 | 取扱いと必要書類 |
添付書類 | 給与明細、課税証明書、雇用契約書など、求められる範囲 |
やることは1つです。組合健保なら、その組合のサイトで「被扶養者認定基準」というページを一度読んでおく。この記事の数字と食い違っていたら、組合の基準のほうが優先です。
3-3. 130万円に入るもの — 給料以外も数えます
税の「年収」より、130万円の「年間収入」のほうが範囲が広いです。日本年金機構は、年間収入に「雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含む」と説明しています。
130万円に入るもの |
|---|
給料(基本給・各種手当・残業代・夜勤手当) |
賞与 |
通勤手当(6章参照) |
雇用保険の失業等給付(基本手当) |
健康保険の傷病手当金・出産手当金 |
公的年金 |
なお、傷病手当金・出産手当金は健康保険の被保険者本人の給付です。いま扶養に入っている人が受け取ることはありません。この行が効いてくるのは、常勤を辞めた直後に資格喪失後の継続給付として受け取っている場合や、別の勤務先で自分が被保険者になっている場合です(8-2)。
失業給付についても、基本手当の日額が3,611円を超えると、受給している間は扶養から外れる扱いになります。退職して失業給付を受けながら扶養に入りたい場合は、この順番が問題になります(3-6)。
3-4. 一時的に超えたときの「事業主の証明」
人手が足りずに一時的にシフトが増え、結果として130万円に届いてしまう。この場合の救済措置があります。
全国健康保険協会は、「人手不足による労働時間延長等に伴い、一時的に収入が増加し年収が130万円(60歳以上または障害厚生年金受給者等の場合は180万円、19歳以上23歳未満(配偶者を除く)の場合は150万円)以上となっても、事業主証明を添付することにより、原則、連続2回まで被扶養者の認定が可能」としています。
この取扱いは2023年10月に「当面の対応」として始まりましたが、2025年10月1日付の通知(保保発1001第1号)で恒久化されました。
ただし、使える場面は限られます。厚生労働省のQ&Aは、対象になるのは「他の従業員が休職・退職したことによる業務量増加」「受注好調による業務量増加」といった場合で、「基本給が上がった場合や恒常的な手当が新設された場合、労働契約における所定労働時間・日数が増加した場合など、今後も引き続き収入が増えることが確実な場合」は対象外としています。自分からシフトを増やして超えた場合は、この証明では戻せません。
「連続2回」とは、連続する2年間の各年の収入確認で証明を使うことを指します。3年目は使えません。
頼み方は難しくありません。勤務先の総務・事務長に「被扶養者認定の事業主証明をお願いしたい」と伝えてください。様式は厚生労働省が公開しているものがあり、夫の勤務先経由で保険者に提出します。
3-5. 2026年4月から始まった「労働契約による判定」— 単発中心だと使えない
2026年4月1日から、被扶養者の認定に新しい方法が加わりました。根拠は2025年10月1日付の通知(保保発1001第3号・年管管発1001第3号)です。
内容は、労働契約書に書かれた賃金から見込まれる年間収入が130万円未満であれば、原則として被扶養者として扱うというもの。契約が明確なら、毎年の収入確認で細かく実績を問われずに済みます。
ところが、日本年金機構はこの方法で認定できない例として、次を挙げています。
- 契約期間が1年未満
- 労働時間の記載が不明確(「シフト制による」等)
- 手当の金額が不明確(「通勤手当有」等)
単発バイトを中心に働いている看護師は、この3つにそのまま当てはまります。1日単位の契約は当然1年未満ですし、日ごとに勤務先も時間も変わるので「労働契約書に書かれた年間収入」が存在しません。さらにこの方法は、給与以外の収入がないことも前提にしているため、掛け持ちの読者は二重に外れます。
つまりこの改正は、決まったシフトで長期パートをしている人には恩恵がありますが、単発中心の働き方には届きません。単発で働く人は、これまでどおり実績と見込みで判定されます。この記事の7章で、そのための年間の組み立て方を扱います。
なお、この改正は従来の判定方法を置き換えるものではありません。厚生労働省のQ&Aも、労働契約内容が確認できる書類の提出がない場合は「従来どおり、給与明細書、課税(非課税)証明書等により年間収入を判定することとなります」としています。
3-6. 扶養を外れるとき・入るとき、実際に何を出すか
自動では切り替わりません。手続きが要ります。
扶養を外れるとき
- 自分がすること。夫(親)に「扶養を外れる見込み」を伝え、夫が勤務先の総務・人事に申し出ます。届出を出すのは被保険者である夫であって、あなた本人ではありません。
- 出る書類。健康保険被扶養者(異動)届を、会社経由で保険者へ。
- 求められる添付書類の例。直近数か月の給与明細、雇用契約書、収入見込みの証明。掛け持ちなら全勤務先ぶんが要ります。
- 返すもの。資格確認書が交付されていれば返却します。受け取る「資格喪失証明書」が、このあとの手続きに必要です。
- 勤務先で社会保険に入る場合(4章の要件を満たす場合)は、勤務先が加入手続きをします。
- どこの社会保険にも入らない場合は、資格喪失証明書と本人確認書類を持って市区町村へ。国民健康保険の加入と、国民年金の第3号から第1号への種別変更を行います。日本年金機構は、退職などの場合の期限を「退職日の翌日から14日以内」としています。この2つは窓口が別のことがあります。
- 保険料は資格喪失日にさかのぼって発生します。手続きが遅れても、払う期間が短くなるわけではありません。
このとき、国民年金保険料と国民健康保険料の両方が新しく発生します。厚生年金に加入する場合と違って勤務先が半分を負担することもないので、手取りへの影響はここがいちばん大きくなります(8章)。
扶養に入るとき(常勤を辞めて扶養内で働き始める場合)
失業給付を受け取る予定があるなら、順番に注意してください。基本手当の日額が3,611円を超えていると、受給している間は扶養に入れない扱いになるのが一般的です。退職 → 受給期間は自分で国民健康保険・国民年金 → 受給終了後に扶養、という順になります。給付制限期間中だけ扶養に入れる運用の保険者もあるので、ここは夫の保険者に先に確認してください(「ブランクのある看護師の復職ガイド」)。
この章の出典
- 日本年金機構「健康保険 被扶養者(異動)届」手続説明 https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/hihokensha/20141224.files/setumei.pdf
- 厚生労働省「被扶養者の収入の確認における留意点について」(令和2年4月10日 事務連絡) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc5007&dataType=1&pageNo=1
- 厚生労働省「『年収の壁・支援強化パッケージ』における事業主の証明による被扶養者認定の円滑化の取扱いの恒久化について」(令和7年10月1日 保保発1001第1号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9347&dataType=1&pageNo=1
- 厚生労働省「事業主の証明による被扶養者認定に関するQ&A」 https://www.mhlw.go.jp/content/001678016.pdf
- 厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」(令和7年10月1日 保保発1001第3号・年管管発1001第3号) https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T251006S0060.pdf / Q&A第2版(令和8年3月9日 事務連絡) https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T260310S0010.pdf
- 日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/jigyosho/2026/202605/0501.html
- 全国健康保険協会「被扶養者の認定における特例について」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/public_relations/004/index.html
- 日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20140710-04.html
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4. 「106万円の壁」は2026年10月に撤廃。扶養内パートに残る要件は週20時間
2026年10月から、社会保険の適用要件のうち月額賃金8.8万円という条件がなくなりました。根拠は2025年6月13日に成立し、6月20日に公布された年金制度改正法(令和7年法律第74号)です。厚生労働省は改正の概要で「賃金要件を撤廃するとともに、企業規模要件を令和9年10月1日から令和17年10月1日までの間に段階的に撤廃する」としています。
施行日 撤廃の施行日は政令に委ねられていましたが、2026年9月に公布された政令で2026年10月1日と定められました。その後の改正を含めた最新の状況は、厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトでご確認ください。
「106万円の壁がなくなった」という言い方が広まっていますが、正確にはなくなったのは8.8万円という金額の要件だけです。ほかの要件は残ります。
4-1. 撤廃後に残る4つの要件
勤務先で健康保険・厚生年金に加入することになるのは、次のすべてに当てはまる場合です。
要件 | 内容 |
|---|---|
労働時間 | 週の所定労働時間が20時間以上 |
雇用期間 | 2か月を超えて雇用される見込みがある |
学生 | 昼間部の学生ではないこと。休学中・定時制・通信制の学生は「学生ではない」側に入り、ほかの要件を満たせば加入対象 |
勤務先の規模 | 従業員数が一定以上(下表) |
これとは別に、通常の労働者の週所定労働時間・月所定労働日数の4分の3以上で働く場合は、上の要件と関係なく被保険者になります。常勤の週40時間に対して週30時間以上働くなら、この時点で加入です。
2026年10月以降、扶養内で働きたい人が意識すべき数字は、金額ではなく週20時間になりました。
4-2. 勤務先の従業員数の要件は、2035年まで段階的に下がる
時期 | 対象になる勤務先の従業員数 |
|---|---|
2027年9月まで | 51人以上 |
2027年10月から | 36人以上 |
2029年10月から | 21人以上 |
2032年10月から | 11人以上 |
2035年10月から | すべての事業所(規模要件の撤廃) |
いま従業員数の少ないクリニックや小規模な施設で週20時間以上働いていても加入対象にならないのは、この規模要件が理由です。ただし段階的に下がるので、同じ働き方を続けていても、ある年の10月から加入対象になることがあります。
4-3. 8.8万円の判定から外れていたもの(撤廃前の話ですが、誤解の元なので)
撤廃前の8.8万円は、給料の全部で数えていたわけではありませんでした。日本年金機構のQ&Aは、次を算定に含めないとしていました。
①臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
②1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
③時間外労働に対して支払われる賃金、休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)
④最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)
夜勤の深夜割増や残業代、通勤手当は、8.8万円には入っていませんでした。ここから「夜勤手当は年収に入らない」という誤解が生まれています。8.8万円の話と130万円の話は別物で、130万円のほうは割増賃金も通勤手当も含めて数えます(6章)。
そして8.8万円の要件そのものがなくなったので、撤廃後は、賃金の額ではなく週20時間かどうかが判定の中心になります。
この章の出典
- 厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト「短時間労働者の要件」 https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/seido/tanjikan/
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00021.html
- 厚生労働省「年金制度改正法(令和7年法律第74号)改正の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/001497095.pdf
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大 Q&A集(令和6年10月施行分)」問39・問41 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.files/QA0610.pdf
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5. 単発の掛け持ちで扶養はどうなるか — 合算されるもの・されないもの
ここが、この記事でいちばん実害の出るところです。社会保険に入るかどうかの判定と、扶養を外れるかどうかの判定で、合算のルールが逆になります。
5-1. 社会保険の加入判定は、勤務先ごと。労働時間は合算されない
日本年金機構のQ&Aに、はっきり書かれています。
被保険者資格の取得要件を満たすか否かについては、各事業所単位で判断を行うこととしており、2ヶ所以上の事業所における所定内賃金や労働時間を合算することはしません。
法律の側も同じです。健康保険法第3条第1項第9号は、短時間労働者を「同一の事業所に使用される通常の労働者…の四分の三未満である短時間労働者」と定義しており、判定の単位は事業所です。
つまり、A病院で週12時間、B施設で週10時間、合計週22時間働いていても、どちらの勤務先でも社会保険には加入しません。週20時間を超えているのは合計であって、事業所ごとに見れば20時間未満だからです。
5-2. ところが130万円の判定は、全部合算する
一方、健康保険の被扶養者かどうかを判定する130万円は、収入の出どころを問いません。A病院とB施設と単発バイト3件、全部足して130万円です。
この非対称を表にします。
判定 | 合算するか | 単位 |
|---|---|---|
勤務先で社会保険に入るか(週20時間) | 合算しない | 事業所ごと |
健康保険の扶養を外れるか(130万円) | 合算する | 本人の全収入 |
税の扶養に入れるか(136万円) | 合算する | 本人の全収入 |
所得税がかかるか(178万円) | 合算する | 本人の全収入 |
掛け持ちで起きやすいのは、どこの社会保険にも入らないまま、扶養だけ外れるという状態です。この場合、勤務先の厚生年金(会社が半分負担)ではなく、国民年金と国民健康保険を自分で全額払うことになります。手取りへの影響は、勤務先で社会保険に入る場合よりも大きくなります。
掛け持ちをしていて130万円が見えてきたら、どこか1か所で週20時間以上に寄せて勤務先の社会保険に入るほうが、負担の面では有利なことがあります。ただし勤務先の従業員数の要件(4-2)を満たしている必要があります。
5-3. 2か所とも加入要件を満たした場合は、届出が要る
どちらの勤務先でも週20時間以上・従業員数の要件も満たす、という場合は、両方で被保険者になります。このとき本人が出す届出があります。
- 名称:健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届
- 出す人:被保険者本人(勤務先ではありません)
- 期限:事実が発生してから10日以内
- 出す先:選んだ事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所
保険料は、それぞれの勤務先の報酬月額を合算して標準報酬月額を決め、そのうえで各勤務先の報酬月額に応じて按分されます。二重に取られるわけではありません。
5-4. 「毎回引かれている」は、壁を超えた印ではない
1日ごとのお金の流れそのものは「初めての看護師単発バイト」にあります。ここでは壁との関係だけを扱います。
単発バイトの給料からは、その日のうちに所得税が引かれることがあります。これを見て「もう壁を超えたのか」と心配する必要はありません。
給与から引く所得税の額は、扶養控除等申告書を出しているかどうかで変わります。
区分 | 対象 | 単発での典型 |
|---|---|---|
甲欄 | 扶養控除等申告書を出している勤務先 | 主に働いている1か所 |
乙欄 | 申告書を出していない勤務先 | 2か所目以降 |
丙欄 | 日雇賃金 | 1日単位の単発 |
扶養控除等申告書は、2か所以上に同時に出せません。所得税法第194条第1項が「その給与等の支払者(その支払者が二以上ある場合には、主たる給与等の支払者)」から、と定めているためです。
単発の1日勤務は、日々雇い入れられ、その日ごとに給料が支払われる形であれば丙欄(日雇賃金)で計算されます。同じ勤務先から継続して2か月を超えて支払われる部分は、丙欄から外れます(所得税法施行令第309条)。丙欄で引かれる額は日額に応じて税額表で決まり、これは概算の前払いであって、確定した税額ではありません。
5-5. 年末調整は1社だけ。確定申告が必要になる条件
年末調整をしてくれるのは、扶養控除等申告書を出した1社だけです。国税庁も「原則として従たる給与については年末調整できません」「所得者本人が確定申告することにより所得税および復興特別所得税の精算を行う必要があります」としています。
では確定申告が必要かというと、扶養内で働いている人については義務が生じないことが通常です。「副業が20万円を超えたら申告」という説明が広まっていますが、所得税法第121条第1項第2号にはイとロの2つの免除規定があり、どちらか一方に当てはまれば申告は不要だからです。
- イ:年末調整されなかった給与の収入金額と、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円以下であるとき
- ロ:その年の給与収入の合計から所得控除(雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除を除く)を差し引いた額が150万円以下で、かつ給与・退職所得以外の所得が20万円以下であるとき
国税庁も、2か所以上から給与を受けている人について「給与の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除を除く。)を差し引いた金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円以下の人は、申告は不要です」としています。
扶養内で働いていて給与の合計が150万円以下なら、ロに当てはまります。複数の勤務先で年末調整されなかった給与が20万円を超えていても、申告義務は生じないのが通常です。
そのうえで、覚えておくとよいことが2つあります。
1つ目は、20万円は「所得」ではなく「収入金額」で判定するということ。単発の給与には経費を引く仕組みがないので、支払われた額そのもので見ます。イのほうを使う場面ではここを間違えないでください。
2つ目は、義務がなくても申告して構わないこと。これは申告義務を免除する規定であって、申告を禁じるものではありません。乙欄・丙欄で引かれた税金は、申告しないと戻ってきません。年収178万円以下なら最終的な所得税はゼロですから、扶養内で働いている人は申告すれば引かれた分が返ってくる側です。損をする話ではなく、手続きをするかどうかの話です。
5-6. 住民税には20万円ルールがない。市区町村は全部合算して見ている
所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告は別に必要になる場合があります。20万円の免除規定は所得税のものであって、住民税にはありません。
ただし実務上は、各勤務先が市区町村へ給与支払報告書を出しています。地方税法第317条の6は、1月1日現在で給与を支払う者に対し、同月31日までに、給与を受けている人の1月1日現在の住所地の市町村長あてにこれを提出することを義務づけています。
つまり単発を何か所で行っても、住民税を計算する段階で市区町村がすべて合算して把握します。「単発だから合算されない」ということはありません。どの勤務先に何日入ったかを自分で記録しておくと、年末に自分でも確認できます(7章)。
この章の出典
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大 Q&A集(令和6年10月施行分)」問50 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.files/QA0610.pdf
- 健康保険法(大正11年法律第70号)第3条 https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070
- 日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20131022.html
- 所得税法(昭和40年法律第33号)第121条・第185条・第190条・第194条 https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 所得税法施行令(昭和40年政令第96号)第309条 https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096
- 国税庁 タックスアンサー No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2520.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2511 税額表の種類と使い方 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2511.htm / No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
- 地方税法(昭和25年法律第226号)第317条の2・第317条の6 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
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6. 年収に何が入って、何が入らないか — 交通費・賞与・夜勤手当
「交通費は年収に入りますか」という質問には、税と社会保険で違う答えを返す必要があります。同じ「年収」という言葉が、2つの制度で別の中身を指しているためです。
税(178万円・136万円) | 社会保険(130万円) | |
|---|---|---|
基本給・夜勤手当 | 入る | 入る |
残業代・深夜割増 | 入る | 入る |
賞与 | 入る | 入る |
通勤手当(非課税の範囲内) | 入らない | 入る前提で見る |
失業給付・傷病手当金・出産手当金 | 入らない | 入る |
6-1. 税では、非課税の範囲内の通勤手当は年収に入らない
所得税法第9条により、通勤手当のうち通常必要と認められる部分には所得税がかかりません。非課税の限度額は、電車・バス通勤なら1か月あたり15万円。マイカー・自転車通勤なら片道の距離に応じて決まっており、2025年11月19日公布の政令で引き上げられました(2025年4月1日以後に支払われる通勤手当から適用)。
そして国税庁は、配偶者控除の判定について「非課税所得や次の(1)から(5)のような所得は配偶者控除が受けられるかどうかを判定する場合の合計所得金額から除かれます」としています。
確認は簡単で、源泉徴収票の「支払金額」欄を見れば足ります。この欄には非課税分の通勤手当は含まれていません(国税庁のQ&Aも「非課税とされる部分の通勤手当の金額を除いた金額を記入してください」としています)。ここに書かれた金額が、178万円・136万円と比べるべき数字です。
6-2. 社会保険では、除外する定めが見当たらない
130万円のほうは事情が違います。通勤手当を除外するという定めが、厚生労働省・日本年金機構・全国健康保険協会の資料で見つけられませんでした。
手がかりになるのは、2026年4月から始まった労働契約による認定の通知(3-5)の注記です。判定に使う「賃金」を「労働基準法第11条に規定される賃金をいい、諸手当及び賞与も含まれる」と定義しています。労働基準法上の賃金には通勤手当も含まれるので、諸手当を含めて数える建付けであることは読み取れます。
一方で、撤廃前の8.8万円の判定では通勤手当は明確に除外されていました(4-3)。この差が「交通費は年収に入らない」という誤解の出どころです。
130万円については、通勤手当も含めて計算しておくのが安全です。実際の取扱いは加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)によって運用があるので、ぎりぎりの水準にいるなら加入先に確認してください。
6-3. 夜勤手当・残業代は、130万円には全部入る
4-3で見たとおり、割増賃金が除外されていたのは8.8万円の判定だけです。130万円にも、税の178万円・136万円にも、夜勤手当も深夜割増も残業代も全部入ります。
夜勤を入れる月と入れない月で収入が大きくぶれる看護師にとって、これは実務上いちばん効く点です。2-2の計算に戻って、自分の年間の見込みを立ててください。
この章の出典
- 所得税法(昭和40年法律第33号)第9条 https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 国税庁 タックスアンサー No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2582.htm / No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2585.htm
- 国税庁「通勤手当の非課税限度額の改正について」(令和7年11月) https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025tsukin/pdf/01.pdf / Q&A https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025tsukin/pdf/03.pdf
- 国税庁 タックスアンサー No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1190.htm
- 厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」(令和7年10月1日 保保発1001第3号) https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T251006S0060.pdf
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7. 扶養内で働きすぎないための管理 — 年末に慌てない年3回の計算
扶養内で働く看護師がいちばん困るのは、11月に計算して「あと3万円しか残っていない」と気づく瞬間です。年末は職場の人手も足りない時期で、断りづらさも重なります。
この事態は、年に3回だけ計算する習慣でほぼ防げます。
7-0. いちばん簡単な運用は「毎月108,333円以内」です
130万円は今後1年間の見込みで判定するので(3-1)、本来いちばん確実なのは、毎月の総支給額を108,333円以内に収め続けることです。この状態なら、どの時点で12か月先を見ても130万円に届きません。年末に慌てる展開も起きません。
それでも暦年の積み上げを見るのは、理由が2つあります。1つは、保険者が年1回の収入確認で暦年の実績や課税証明書を見ることがあるため。もう1つは、夜勤の有無で月の額が動く看護師は、月ごとの上限だけでは管理しきれないためです。
使い分けはこうです。月ごとの額が安定している方は、108,333円のルールだけで足ります(この章の残りは読まなくて構いません)。夜勤や単発で月の額が動く方は、以下の年3回の計算を使ってください。ただしその場合も、108,333円を大きく超える月を3か月以上続けないことを、あわせて意識してください。
7-1. 4月・9月・11月の3回だけ計算する
時期 | やること | 判断 |
|---|---|---|
4月 | 1〜3月の実績を出し、4倍して年間の見込みを立てる | ペースが速すぎないか。速いなら4〜6月で調整 |
9月 | 1〜8月の実績を出し、130万円との差を出す | 残り4か月で使える金額が確定する |
11月 | 1〜10月の実績を出し、12月に入れる日数を決める | 12月のシフトを出す前に決めておく |
11月に計算するのでは遅い、という話ではありません。11月に決めるために、9月に差額を把握しておくという順番です。9月時点で残りが少ないとわかれば、10月・11月でセーブして12月に余力を残せます。
7-2. 残り時間の出し方
9月末時点の実績が92万円、時給2,000円、10〜12月に見込まれる交通費が2.5万円、賞与の予定なし、だとします。
- 130万円 − 92万円 − 2.5万円 = 35.5万円(時給で稼げる枠)
- 35.5万円 ÷ 2,000円 = 約177時間
- 177時間 ÷ 3か月 = 月約59時間(1日8時間なら月7日)
夜勤を入れる予定があるなら、1回あたりの支給額を先に引いてから、残りを時給で割ってください。
もう1つ、月ごとの上限も忘れないでください。130万円は今後1年間の見込みで見る制度なので(3-1)、1か月あたりの総支給額が108,333円を大きく超える月を続けないほうが安全です。時給2,000円なら月約54時間、1日8時間なら月6〜7日が目安になります。上の計算で出た月59時間は、この水準をわずかに超えています。3か月続けるのではなく、どこか1か月を軽くする組み方にしてください。
この計算に使う実績は、給与明細ではなく振込額の合計でもありません。社会保険料や所得税が引かれる前の、支給総額です。給与明細の「総支給額」を足していってください。
7-3. 超えそうなときの手
単発で細かく調整する。扶養内の調整がしにくいのは、長期パートのシフトが月単位・週単位で固定されているからです。1日単位の単発なら、残っている金額に合わせて日数を決められます。「あと2日だけ入る」という調整は、固定シフトでは難しいことがあります。お試し勤務の記事で仕組みを扱っています。施設の種類ごとの仕事の中身は「看護師の単発バイトの仕事内容」にまとめています。扶養内の枠が小さいほど、1回あたりの時間が読める施設を選ぶ意味は大きくなります。
翌年に回す。12月に働くぶんを1月に動かせるなら、その年の収入にはなりません。ただし130万円は「今後1年間の見込み」で見る制度なので(3-1)、1月から急に増やすと見込みの側で引っかかることがあります。
勤務先に先に伝える。「12月は扶養の関係でこれ以上入れません」を、シフトが出てから言うのと、出る前に言うのとでは、職場の受け止めが変わります。11月の計算はそのための締め切りです。
7-4. 超えてしまったら
超えた月の分をなかったことにはできません。やることは2つです。
1つは、3-4の事業主の証明が使えないか確認すること。人手不足で一時的にシフトが増えた結果なら、原則連続2回まで扶養が続きます。自分から増やした場合や、契約上の所定労働時間そのものを増やした場合は使えません。
もう1つは、3-6の切り替えの手続きをすること。放っておくと、国民年金が未納になり、医療費が全額自己負担になる期間が生まれます。
この章の出典
- 日本年金機構「健康保険 被扶養者(異動)届」手続説明 https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/hihokensha/20141224.files/setumei.pdf
- 厚生労働省「事業主の証明による被扶養者認定に関するQ&A」 https://www.mhlw.go.jp/content/001678016.pdf
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8. 扶養を外れて働くか、扶養内に収めるか — 数字で比べる
この記事は「扶養内に収めるべき」とも「外れるべき」とも言いません。判断材料を並べます。
8-1. 手取りが逆転する区間がある
130万円を少し超えたところでは、社会保険料の負担が増えるぶん、働く時間を増やしたのに手取りが減るという区間が生まれます。いわゆる「働き損」と呼ばれるものです。
ただしこの区間は、収入が増えれば解消します。どこで解消するかは、加入する健康保険の保険料率、住んでいる自治体の国民健康保険料、扶養している家族の人数によって変わるため、一般化した金額を書くと誤解を招きます。自分の場合の分岐点は、勤務先の社会保険に入るのか国民健康保険なのかを決めたうえで、保険料率を当てはめて計算してください。
ここで効いてくるのが5-2の非対称です。勤務先の社会保険に入れる(会社が保険料の半分を負担する)のか、どこにも入らずに国民健康保険と国民年金を全額自分で払うのかで、逆転の幅がまったく違います。扶養を外れると決めたなら、どこか1か所で週20時間以上に寄せられないかを先に検討する価値があります。
なお、夫が自営業などで世帯が国民健康保険の場合、そもそも扶養という仕組みがないので、この逆転は起きません。国保料は前年の所得に応じて世帯ごとに計算され、130万円という区切りもありません。
8-2. 厚生年金に入る側の利点
保険料の負担だけを見ると損に見えますが、勤務先の社会保険に入ると次が変わります。
- 将来の年金額が増える(国民年金だけの場合より上乗せされる)
- 病気やけがで働けない期間に傷病手当金が受けられる
- 出産で休む期間に出産手当金が受けられる
- 保険料の半分を勤務先が負担する
傷病手当金と出産手当金は、扶養に入っているだけでは受けられません。看護師は腰痛や感染症で働けなくなる場面が現実にあります。ここをどう評価するかは、年齢と家庭の状況によって変わります。
なお、これらの給付を受け取っている期間は、その額が130万円の判定に入ります(3-3)。
8-3. 常勤に戻ることを含めて考えるなら
扶養を外れるなら、パートで時間を増やすのか、常勤に戻るのかは別の問題です。常勤の負荷と働き方の選択肢については常勤がきつい看護師へで扱っています。この記事とあわせて読むと、収入と負荷の両面から比べられます。
この章の出典
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html
- 健康保険法(大正11年法律第70号)第99条(傷病手当金)・第102条(出産手当金) https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070
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9. タメシビで想定していること
タメシビは、看護師・准看護師が、施設と直接雇用契約を結んで1日単位で働けるスポット勤務サービスです。応募後、施設が内容を確認して勤務が確定します(事前の面接・書類選考はありません)。求人には、業務内容、必要な経験、持ち物、当日の流れを明示する方針です。
この記事の言葉で言えば、タメシビは、7章の「単発で細かく調整する」を、1日単位の直接雇用で行う形です。常勤・パートの採用をあっせんするサービスではありません。働く日を自分で決め、働いてから、その職場で続けるかをご自身で選べることを、サービスの前提に置いています。
タメシビは2026年内のサービス開始に向けて準備中で、どの地域・どの種類の求人が掲載されるかは、これから決まります。
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10. よくある質問
「103万円の壁」はもうないのですか
自分に所得税がかかり始めるラインとしては、2024年分までの数字です。2026年分は178万円です(1-1)。ただし住民税は所得税とは別のラインでかかり、その金額は住んでいる市区町村の級地区分によって変わります(1-4)。「103万円」という数字自体が完全に消えたわけではなく、どの税の、どの年分の話なのかを分けて考える必要があります。
106万円の壁は、いつからなくなったのですか
2026年10月からです。根拠は2025年6月に成立・公布された年金制度改正法(令和7年法律第74号)で、撤廃されるのは月額賃金8.8万円という要件です。週20時間以上・学生でない・2か月を超える雇用の見込み・勤務先の従業員数、という要件は残ります(4章)。施行日は政令で2026年10月1日と定められました。最新の状況は厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトで確認してください。
扶養内で働きたいと、面接や登録のときにどう伝えればいいですか
最初の面接・登録の時点で「年収130万円以内に収めたい」と数字で伝えるのが確実です。「扶養内で」とだけ言うと、相手が103万円や106万円で受け取ることがあります。あわせて「月の上限は◯万円」「月◯日まで」と、シフトを組む側が使える単位に直して伝えてください。年末に近づいてから伝えるより、契約の時点で伝えたほうが調整はずっと簡単です。
求人に「社会保険完備」とあります。扶養内では働けませんか
社会保険完備は、要件を満たす人が加入できるという意味であって、全員が加入するという意味ではありません。週20時間未満なら加入対象外です(4章)。応募の前に「週何時間までなら加入対象にならないか」を確認してください。
扶養内で働ける日数の目安は、週何日・月何日ですか
時給によります。時給2,000円なら週2日・1日6時間、または1日8時間なら月6〜7日が目安です。時給2,500円なら月5日強。交通費や夜勤手当があるぶん、実際にはここから減ります(2-1)。
夫の会社の家族手当が「103万円まで」と決まっています
これは法律の壁ではなく、会社の給与規程です。税制が変わっても、会社が規程を変えなければ基準は変わりません。厚生労働省も配偶者手当の見直しを企業に呼びかけていますが、見直すかどうかは各社の判断です。夫の会社の規程がいくらになっているかを確認してください。金額によっては、税の壁より手前で家族手当の壁が来ます。
夫が自営業(国民健康保険)ですが、130万円は関係ありますか
関係ありません。国民健康保険には扶養という仕組みがなく、世帯の一人ひとりが被保険者だからです。国民年金の第3号被保険者にもなれないので、あなたはもともと第1号被保険者です。見るのは税の136万円と178万円だけになります。ただし国保料は前年の世帯の所得で決まるため、収入が増えれば世帯の保険料は増えます。
単発バイトを3か所でやっています。どこにも社会保険の話をされませんが、大丈夫ですか
社会保険に入るかどうかは勤務先ごとに判定するので、1か所ずつが週20時間未満なら、どこからも話が出ないのが正常です(5-1)。ただし扶養の130万円は全部合算します(5-2)。勤務先が教えてくれることはないので、自分で合計を管理してください。
掛け持ちしていることは、勤務先や夫の会社にバレますか
隠す・隠さないという話ではなく、市区町村は給与支払報告書ですべて把握しています(5-6)。夫の会社の健康保険も、年1回の収入確認で全勤務先ぶんの証明を求めます。掛け持ちを前提に、合計額を自分で管理するほうが結果的に楽です。
交通費は年収に入りますか
税の年収(178万円・136万円)には入りません。源泉徴収票の「支払金額」に非課税分の通勤手当は含まれていないので、その額を見れば確認できます。社会保険の130万円については、除外するという定めが確認できていないため、含めて計算しておくのが安全です(6章)。
夜勤手当は年収に入りますか
130万円にも178万円にも入ります。「入らない」という説明は、2026年10月になくなった月額8.8万円の判定ルール(深夜割増などを除外していた)が独り歩きしたものです(4-3・6-3)。
単発の給料から所得税が引かれました。壁を超えたということですか
違います。単発の1日勤務は日雇賃金として丙欄で計算されることがあり、引かれる額は日額に応じて税額表で決まります。これは概算の前払いで、確定した税額ではありません。年末調整または確定申告で精算されます(5-4)。1日ごとのお金の流れは「初めての看護師単発バイト」にまとめています。
確定申告はしないといけませんか
扶養内で働いていて、給与の合計が150万円以下なら、申告義務は生じないのが通常です。所得税法の免除規定にはイとロの2つがあり、給与の合計から所得控除を引いた額が150万円以下で、給与以外の所得が20万円以下なら、年末調整されなかった給与がいくらあってもロに当てはまります(5-5)。ただし乙欄・丙欄で引かれた税金は、申告しないと戻ってきません。義務ではなく、還付を受けるために申告するという位置づけです。なお所得税の申告が不要でも住民税の申告が必要な場合があるので、市区町村に確認してください。
130万円を超えたら、その年はもう働かないほうがいいですか
「その年」で考えるのが、そもそも合っていません。130万円は今後1年間の見込みで判定するので(3-1)、暦年をリセットしても状態が続けば同じことです。判断のしかたは2つあります。一時的な増加なら、事業主の証明で扶養が続く可能性があります(3-4)。恒常的に増えるなら、中途半端に抑えるより、勤務先の社会保険に入れる働き方に寄せたほうが手取りの回復は早くなります(8-1)。どちらにするかを先に決めてから、日数を決めてください。
年の途中で扶養を外れたら、その年の分はさかのぼって払うのですか
保険料は、さかのぼって払います。扶養を外れる日(資格喪失日)は保険者が決め、その日以降はあなたが国民健康保険(または勤務先の健康保険)の被保険者だったことになります。国民健康保険料・国民年金保険料は資格喪失日にさかのぼって発生するので、手続きが遅れた月の分がなくなることはありません。
さらに、扶養を外れていた期間に扶養の資格で医療機関にかかっていた場合、その期間の医療費のうち保険者が負担した分の返還を求められることがあります。気づいた時点で、夫の勤務先を通じて健康保険に相談してください。放置するほど、返還を求められる期間が伸びます。
常勤を辞めたあと、出産手当金を受け取りながら夫の扶養に入れますか
出産手当金・傷病手当金は健康保険の被保険者本人の給付なので、退職後に資格喪失後の継続給付として受け取っている状態が該当します。この間の給付額は130万円の判定に入り、日額が3,611円を超えていると、受給している間は扶養に入れない扱いになるのが一般的です。受給が終わってから扶養の申請をする、という順番になります。金額と期間は、夫の加入する健康保険に確認してください(3-3・3-6)。
訪問看護やデイサービスでも扶養内で働けますか
働けます。扶養の判定は施設の種別と関係なく、収入の合計で決まるからです。ただし1回あたりの勤務時間や1日の拘束時間は施設によって違い、扶養内の枠が小さいほどその差が効いてきます。施設の種類ごとの仕事の中身は「看護師の単発バイトの仕事内容」にまとめています。
ブランクがあって、まず扶養内から復職したいのですが
扶養内の短時間勤務から始めるのは現実的な入り方です。復職の段取り、支援制度、慣らし方は「ブランクのある看護師の復職ガイド」にまとめています。
この章の出典
- 国税庁 タックスアンサー No.2514 パートやアルバイトの源泉徴収 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2514.htm
- 厚生労働省「配偶者手当を見直して若い人材の確保や能力開発に取り組みませんか?」 https://www.mhlw.go.jp/content/001678307.pdf
- 厚生労働省「年収の壁」への対応 https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html
- 国税庁 タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
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読み終えたら、この4つだけ
- 夫(親)の保険証かマイナポータルで、保険者名を確認する。協会けんぽか、組合健保か(3-2)。組合なら、その組合の「被扶養者認定基準」のページを一度読んでください。
- 今年の総支給額を合計する。振込額ではなく、給与明細の総支給額です。掛け持ちなら全部(7-2)。
- 130万円から、交通費と賞与の見込みを引く。残った枠を時給で割れば、残りの時間が出ます(2-1)。
- 夫の会社の家族手当の基準額を聞いておく。税の壁より手前にあることがあります。
ここまでやれば、年末に慌てる展開はほぼなくなります。
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扶養内で働くことは、収入を抑えることではなく、上限を知ったうえで自分で日数を決めることです。壁の数字は2026年に動きましたが、やることは変わりません。自分の時給で上限までの時間を出し(2章)、年に3回だけ計算し(7章)、残りに合わせて日数を決める。それだけで、年末に慌てる展開はほぼなくなります(▲ 壁の一覧に戻る)。
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この記事で確認しきれなかったこと
項目 | 状況 |
|---|---|
住民税の非課税ライン | 級地区分と年分で変わり、2026年の収入に対する金額を公表資料で確認できなかったため、金額は示さなかった。市区町村での確認を前提とした |
配偶者特別控除が満額38万円となる給与収入 | 国税庁の資料で確認できたのは「配偶者の合計所得金額95万円以下」という基準まで。給与収入に換算した金額は示さなかった |
130万円の判定における通勤手当の扱い | 除外する定めも、含めると明記した資料も発見できなかった。判定に使う賃金の定義(労働基準法第11条)から含める建付けと読めるため、含めて計算する前提で書いた |
手取りの逆転が解消する具体的な収入額 | 保険料率・自治体・扶養家族数で変わるため、一般化した金額も概算も示さなかった |
看護師のパート・単発の時給水準 | 平均値は示していない。時給は勤務先・地域・時間帯で幅が大きく、平均を示すと自分の条件と合わない読者を誤らせるため、読者自身の時給を当てはめる設計にした(編集判断) |
日雇特例被保険者制度 | 健康保険法の条文と全国健康保険協会の保険料額表は確認したが、制度の全体像を説明した一般向けの公式解説には到達しなかったため、本文では扱わなかった |
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参考・出典一覧
法令
- 所得税法(昭和40年法律第33号) https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 所得税法施行令(昭和40年政令第96号) https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096
- 地方税法(昭和25年法律第226号) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 地方税法施行令(昭和25年政令第245号) https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000245
- 健康保険法(大正11年法律第70号) https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070
- 国民年金法(昭和34年法律第141号) https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000141
国税庁
- 「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2026kaisei.pdf
- 「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2026kiso/index.htm
- 「通勤手当の非課税限度額の改正について」(令和7年11月) https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025tsukin/pdf/01.pdf / 同 Q&A https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025tsukin/pdf/03.pdf
- タックスアンサー No.1800 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1800.htm / No.1199 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm / No.1190 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1190.htm / No.1191 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm / No.1195 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm / No.1900 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm / No.2511 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2511.htm / No.2514 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2514.htm / No.2520 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2520.htm / No.2582 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2582.htm / No.2585 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2585.htm
総務省
- 総務省「令和7年度税制改正(個人住民税)」 https://www.soumu.go.jp/main_content/001002521.pdf
厚生労働省
- 「年収の壁」への対応 https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html
- 社会保険適用拡大特設サイト https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/ / 短時間労働者の要件 https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/seido/tanjikan/ / 適用拡大Q&A https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/qa/
- 「社会保険の加入対象の拡大について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00021.html
- 年金制度改正法(令和7年法律第74号)改正の概要 https://www.mhlw.go.jp/content/001497095.pdf
- 「収入がある者についての被扶養者の認定について」(昭和52年4月6日 保発第9号・庁保発第9号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb0189&dataType=1&pageNo=1
- 「被扶養者の収入の確認における留意点について」(令和2年4月10日 事務連絡) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc5007&dataType=1&pageNo=1
- 事業主の証明による被扶養者認定の円滑化の取扱いの恒久化について(令和7年10月1日 保保発1001第1号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9347&dataType=1&pageNo=1
- 「事業主の証明による被扶養者認定に関するQ&A」 https://www.mhlw.go.jp/content/001678016.pdf
- 労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて(令和7年10月1日 保保発1001第3号・年管管発1001第3号) https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T251006S0060.pdf / Q&A第2版 https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T260310S0010.pdf
- 「配偶者手当を見直して若い人材の確保や能力開発に取り組みませんか?」 https://www.mhlw.go.jp/content/001678307.pdf
日本年金機構・全国健康保険協会
- 「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html
- 「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大 Q&A集(令和6年10月施行分)」 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.files/QA0610.pdf
- 「健康保険 被扶養者(異動)届」手続説明 https://www.nenkin.go.jp/shinsei/kounen/tekiyo/hihokensha/20141224.files/setumei.pdf
- 「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20131022.html
- 「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/jigyosho/2026/202605/0501.html
- 「国民年金に加入するための手続き」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20140710-04.html
- 全国健康保険協会「被扶養者の認定における特例について」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/about/business/public_relations/004/index.html
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