「看護師の派遣は禁止されている」と聞いて、単発バイトに応募してよいのか迷う方がいます。厚生労働省は、原則禁止とされたのは日雇派遣であり、直接雇用による日雇就労は禁止されていないと説明しています。つまり、確かめるべきなのは「単発かどうか」より、「どの契約の形で働くのか」です。
この記事では、単発バイトの契約の形(直接雇用・派遣・職業紹介)の違いと、看護師の派遣について厚生労働省が示している内容を、原文を引用しながらまとめました。応募前に契約の形を確かめる手順も載せています。
この記事は公的資料の内容を紹介する一般的な情報で、個別の求人や働き方が法令に合っているかを判断するものではありません。判断に迷う場合は、求人を出している事業者や、都道府県労働局に確認してください。
この記事の結論
- 厚生労働省は、「改正労働者派遣法で原則禁止とされたのは、あくまでも日雇派遣であり、直接雇用による日雇就労は禁止されていない」と説明しています。
- 単発バイトには、勤務先の施設に直接雇われる形と、派遣会社に雇われて施設で働く形などがあります。形によって、雇用主も、確認すべきルールも変わります。
- 看護師の派遣について、厚生労働省は、病院・診療所などでの派遣を原則として禁止される場所に挙げ、例外や2021年4月からの変更点を示しています。
- 応募前には、雇用主が誰か、労働条件通知書を誰が出すか、派遣の場合はどの場所で働くかを確認してください。
読みたい箇所から確認する
- 1. 厚生労働省の説明:直接雇用の日雇就労は禁止されていない
- 2. 単発バイトの3つの契約の形
- 3. 看護師の派遣について厚生労働省が示している内容
- 4. 応募前に契約の形を確かめる方法
- 5. 単発バイトのアプリ・サイトの役割
- 6. タメシビの仕組み
- 7. 直接雇用で働くときに確認したいこと
- よくある質問
1. 厚生労働省の説明:直接雇用の日雇就労は禁止されていない
「日雇い」という言葉から、単発で働くこと自体が禁止されていると受け取る方もいます。厚生労働省の「改正労働者派遣法に関するQ&A」には、次の問答が載っています。
問:日雇いという働き方は全面的に禁止されるのか。
答:改正労働者派遣法で原則禁止とされたのは、あくまでも日雇派遣であり、直接雇用による日雇就労は禁止されていない。
ここで区別されているのは、「派遣」という形で1日単位で働くことと、勤務先に直接雇われて1日単位で働くことです。
厚生労働省は、直接雇用で短時間・単発に働くことを「スポットワーク」と呼び、「短時間・単発の就労を内容とする雇用契約のもとで働くこと」と説明しています。同省は、スポットワークで働く人向けに注意点をまとめたリーフレットも公表しています(7章)。
この章の出典
- 厚生労働省「改正労働者派遣法に関するQ&A」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/kaisei/05.html
- 厚生労働省「いわゆる『スポットワーク』の留意事項等」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59321.html
2. 単発バイトの3つの契約の形
単発で働くときに関わる契約の形は、主に次の3つです。求人サイトやアプリの画面では違いが見えにくいので、表で整理しました。
直接雇用(スポットワーク) | 派遣 | 職業紹介 | |
|---|---|---|---|
労働契約を結ぶ相手 | 勤務先の施設 | 派遣会社 | 紹介を受けた勤務先 |
雇用主 | 勤務先の施設 | 派遣会社 | 勤務先 |
働く場所 | 雇用主の施設 | 派遣先の施設 | 雇用主の施設 |
賃金の支払義務を負う者 | 勤務先の施設 | 派遣会社 | 勤務先 |
仲介する事業者の役割 | 求人情報を提供する(サービスにより異なる) | 自社で雇って派遣する | 求人者と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんする |
主に関わる法律 | 労働基準法など | 労働者派遣法、労働基準法など | 職業安定法、労働基準法など |
職業紹介について、職業安定法4条1項は「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすること」と定めています。看護師の転職で使われる紹介会社がこれに当たり、紹介を受けて勤務先と労働契約を結ぶと、雇用主はその勤務先になります。
同じ「単発」の求人でも、どの形なのかで、賃金を請求する相手、キャンセルを伝える相手、ケガをしたときに報告する相手が変わります。
なお、この3つはいずれも雇用契約を前提にした形です。 これとは別に「業務委託」と書かれた求人があります。業務委託は雇用契約ではないため、確認すべきことが変わります。詳しくは「看護師の単発求人の「業務委託」とは|雇用契約との違いと確かめ方」にまとめています。
この章の出典
- 職業安定法(昭和22年法律第141号)第4条 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141
- 厚生労働省「いわゆる『スポットワーク』の留意事項等」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59321.html
3. 看護師の派遣について厚生労働省が示している内容
「看護師の派遣は禁止」という話の根拠になっているのが、労働者派遣法と、その政令(労働者派遣法施行令)です。厚生労働省は、2021年の政令改正の際に、看護師等の派遣について通知を出しています。ここでは、その通知の内容を紹介します。
派遣が原則として禁止される場所
通知は、「病院等において医師、看護師等が行う医療関連業務については」労働者派遣が原則として禁止されているとし、その場所を挙げています。主なものは次のとおりです(抜粋。正確な範囲は通知の原文で確認してください)。
- 医療法に規定する病院
- 医療法に規定する診療所
- 介護保険法に規定する介護老人保健施設
- 介護保険法に規定する介護医療院
- 「医療を受ける者の居宅(介護保険法第8条第3項に規定する訪問入浴介護及び同法第8条の2第2項に規定する介護予防訪問入浴介護に係るものを除く。)」
最後の項目のかっこ書きのとおり、訪問入浴介護と介護予防訪問入浴介護は、この項目から除かれています。
政令が定める例外
労働者派遣法施行令2条1項は、禁止の対象となる業務を定めたうえで、かっこ書きで「当該業務について紹介予定派遣をする場合」や、派遣労働者の就業の場所が「へき地にある場合」などを除いています。紹介予定派遣は、派遣の終了後に派遣先で直接雇用されることを予定して行う派遣として、労働者派遣法2条で定義されています。
へき地について、通知は、離島振興法の離島の区域、山村振興法の振興山村の地域、過疎地域などを含む市町村を挙げています。
社会福祉施設等での看護師の派遣
通知は、病院等以外の場所での看護師の派遣について、次のように述べています。
病院等以外の場所(社会福祉施設等)において看護師が行う保健師助産師看護師法第5条に規定する業務(以下『看護業務』という。)については、労働者派遣が認められているところである。
そのうえで、2021年4月1日からの改正点として、次の2つを挙げています。
- へき地にある病院等で、看護師・准看護師などが行う業務の派遣を認める
- 社会福祉施設等で看護師が行う看護業務について、日雇派遣を可能とする
准看護師の日雇派遣
日雇派遣について、通知は次のように明記しています。
なお、日雇派遣が可能となるのは、保健師助産師看護師法第5条に規定する看護師の業務であり、同法第6条に規定する准看護師が行う業務は、日雇派遣の対象とはならないこと。
准看護師の方が派遣の単発求人を見つけた場合は、この点を事業者に確認してください。
→ タメシビは、施設と直接雇用契約を結んで働く単発勤務サービスで、派遣ではありません。現在はサービス開始前で、LINEで先行登録(無料)を受け付けています。
この章の出典
- 厚生労働省 通知「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令の一部を改正する政令の公布について」(令和3年3月2日) https://www.mhlw.go.jp/content/001082432.pdf
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令(昭和61年政令第95号)第2条 https://laws.e-gov.go.jp/law/361CO0000000095
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第2条 https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088
- 厚生労働省「労働者派遣事業」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/roudoushahakennjigyou.html
4. 応募前に契約の形を確かめる方法
求人の画面に「単発」「1日のみ」と書かれていても、契約の形は分からないことがあります。応募前に、次の項目を確認してください。
応募前の確認チェックリスト
- □ 雇用主の欄に書かれているのは、勤務先の施設か、派遣会社か
- □ 労働条件通知書を誰から受け取るのか
- □ 賃金の支払義務を負うのは誰か(振込を代行する事業者と区別する)
- □ 派遣の場合、働く場所が病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院・居宅(訪問入浴を除く)のどれかに当たるか
- □ 派遣の場合、1日単位の契約か、それより長い契約か
- □ 自分の資格が看護師か、准看護師か
- □ 事業者の利用規約に、自社の立場(求人情報の提供、派遣、職業紹介など)が書かれているか
厚生労働省のスポットワーク向けリーフレットは、労働条件通知書について「雇用主が交付する場合もあればスポットワーク仲介事業者が代行して交付する場合もあります。きちんと交付されているか、スポットワーカーの皆さまも確実に確認しましょう。」と呼びかけています。
確認しても分からないとき
チェックリストで気になる点があれば、応募前に事業者へ質問してください。「この求人の雇用主はどこですか」「派遣の場合、どの規定にもとづく派遣ですか」と聞けば、事業者は答えられるはずです。
それでも判断に迷う場合は、公的な窓口に相談できます。厚生労働省のスポットワーク向けリーフレットは、職業安定法・労働者派遣法に関する相談先として都道府県労働局を案内しています。
この章の出典
- 都道府県労働局・労働基準監督署 労働者向けリーフレット「『スポットワーク』の注意点」(R7.7版) https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001512298.pdf
5. 単発バイトのアプリ・サイトの役割
単発バイトのアプリやサイトは、どれも同じ仕組みに見えますが、事業者の役割はサービスによって異なります。自社で看護師を雇って派遣する事業者もあれば、求人情報を掲載して応募の場を提供する事業者もあります。
職業安定法は、求人情報などを提供する事業を「募集情報等提供」として定めています。同法4条は、職業紹介(雇用関係の成立のあっせん)とは別に、求人に関する情報を求職者に提供することなどを募集情報等提供として位置づけています。
利用者の立場から大切なのは、事業者の役割によって、雇用主が誰になるかが変わる点です。使おうとしているサービスの利用規約で、次の2点を確認してください。
- その事業者が、求人情報の提供・派遣・職業紹介のどの立場でサービスを提供しているか
- 働くときの雇用主は誰か
また、厚生労働省のリーフレットは、アプリなどで先着順に決まる仕組みについて、一般に応募した時点で労働契約が成立すると判断されると説明しています。応募から勤務の確定までの流れはサービスによって異なるので、「応募した時点で勤務が確定するのか」も利用規約で確かめてください。
この章の出典
- 職業安定法(昭和22年法律第141号)第4条 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141
- 厚生労働省「募集情報等提供事業」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/boshuujouhouteikyou.html
- 厚生労働省「いわゆる『スポットワーク』における留意事項等をとりまとめたリーフレットを作成し、関係団体にその周知等を要請しました。」(令和7年7月4日) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59197.html
6. タメシビの仕組み
タメシビは、看護師・准看護師が、施設と直接雇用契約を結んで1日単位で働くためのスポット勤務サービスです。派遣ではなく、看護師を施設に紹介・推薦することもしません。仕組みは次のとおりです。
施設
・求人を掲載し、応募内容を確認して承認する
・承認した時点で、看護師と施設の間に労働契約が成立する
・雇用主として、賃金の支払義務や労働時間の管理などを負う
看護師
・求人を見て、自分で応募するかを決める
・施設との労働契約にもとづいて、求人に書かれた業務を行う
タメシビ(株式会社アイナル)
・求人情報と応募の場を提供する
・施設の委託を受けて、賃金・交通費の支払事務を行う(雇用主にはならない)応募しても、施設が承認しないことがあります。承認されて初めて勤務が確定します。
タメシビは2026年内のサービス開始に向けて準備中で、現在はLINEで先行登録を受け付けています。現時点で求人への応募を受け付けているものではありません。
7. 直接雇用で働くときに確認したいこと
直接雇用の単発勤務でも、働くうえで確認したい点があります。厚生労働省のスポットワーク向けリーフレットは、次のような点を挙げています。
- 労働条件通知書が交付されているかを確認すること
- 「仕事に就く前に安全衛生教育をしっかり受けましょう。」
- 「通勤の途中または仕事中にケガをした場合は、就労先の事業について成立する保険関係に基づき労災保険給付を請求することができます。」
- 「労働契約成立後に雇用主の都合で仕事の中止または早上がりを命じられた場合は、雇用主は、所定支払日までに休業手当を支払うことが必要です。」
初めて単発で働くときの準備や当日の流れは、「初めての看護師単発バイト|求人選び・持ち物・当日の流れ」にまとめています。本業がある方は、「看護師の副業禁止はどこまで有効?就業規則と公務員の確認手順」もあわせて確認してください。
この章の出典
- 都道府県労働局・労働基準監督署 労働者向けリーフレット「『スポットワーク』の注意点」(R7.7版) https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001512298.pdf
よくある質問
病院で1日だけ働く派遣の求人を見つけました。応募してよいですか
この記事では、個別の求人が法令に合っているかは判断できません。3章で紹介したとおり、厚生労働省の通知は、病院での看護師の派遣を原則として禁止される場所に挙げ、例外を示しています。応募前に、事業者へ「雇用主はどこか」「どの規定にもとづく派遣か」を確認し、判断に迷う場合は都道府県労働局に相談してください。
准看護師でも単発で働けますか
直接雇用の求人であれば、求人の応募条件によります。派遣の場合、厚生労働省の通知は、社会福祉施設等での日雇派遣について「准看護師が行う業務は、日雇派遣の対象とはならない」と明記しています。
訪問入浴の単発求人は、派遣でもありますか
厚生労働省の通知は、派遣が原則として禁止される場所の一つである「医療を受ける者の居宅」から、訪問入浴介護と介護予防訪問入浴介護に係るものを除いています。個別の求人については、事業者に契約の形を確認してください。
紹介会社を通して働く場合、雇用主は誰ですか
職業紹介は、求人者と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんするものです。紹介を受けて働く場合の雇用主は、紹介先の勤務先です。紹介の条件や契約期間は、紹介会社と勤務先に確認してください。
相談できる公的な窓口はありますか
厚生労働省のスポットワーク向けリーフレットは、賃金・労働時間などは労働基準監督署、職業安定法・労働者派遣法に関することは都道府県労働局を相談先として案内しています。
まとめ
厚生労働省が原則禁止としているのは日雇派遣で、直接雇用による日雇就労は禁止されていないと説明されています。看護師の派遣については、働く場所や資格によって、国が示している扱いが異なります。
単発バイトを選ぶときは、「単発かどうか」ではなく、「雇用主は誰か」「派遣ならどこで働くのか」を確認することが出発点です。分からない点は、応募前に事業者へ質問し、必要に応じて公的な窓口に相談してください。
この記事の主な一次情報
法令
- 職業安定法(昭和22年法律第141号)第4条 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第2条 https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令(昭和61年政令第95号)第2条 https://laws.e-gov.go.jp/law/361CO0000000095
厚生労働省・労働局
- 「改正労働者派遣法に関するQ&A」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/kaisei/05.html
- 通知「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行令の一部を改正する政令の公布について」(令和3年3月2日) https://www.mhlw.go.jp/content/001082432.pdf
- 「労働者派遣事業」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/roudoushahakennjigyou.html
- 「募集情報等提供事業」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/boshuujouhouteikyou.html
- 「いわゆる『スポットワーク』の留意事項等」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59321.html
- 「いわゆる『スポットワーク』における留意事項等をとりまとめたリーフレットを作成し、関係団体にその周知等を要請しました。」(令和7年7月4日) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59197.html
- 労働者向けリーフレット「『スポットワーク』の注意点」(R7.7版) https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001512298.pdf
※いずれも2026年9月17日に確認。制度は改正されることがあります。
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