看護師の副業は、法律で一律に禁止されているわけではありません。民間の病院や施設に勤めている場合、勤務時間外をどう過ごすかは基本的に本人の自由で、職場が副業を制限できる場合は限られています。一方、公務員の身分を持つ看護師は、法律にもとづく許可が必要です。
ですから、最初にやることは「副業できるかどうか」を一般論で考えることではなく、自分の身分と勤務先の就業規則を確認することです。この記事では、確認の順番、届出の書き方、認められた後に気をつけることを、厚生労働省と総務省の資料にもとづいてまとめました。
この記事の結論
- 厚生労働省のガイドラインは、勤務時間外の過ごし方は基本的に労働者の自由だとしています。職場が副業を制限できる場合として示されているのは、本業への支障、秘密の漏えい、競業、名誉・信用の毀損の4つです。
- 最初に確認するのは、自分が公務員の身分を持つかどうかです。自治体直営の病院などで働く常勤の看護師は、地方公務員法にもとづき任命権者の許可が必要です。国立病院機構などの独立行政法人は、職員が国家公務員ではない法人もあります。
- 民間の場合は、就業規則の副業の条文を探し、許可制か届出制かを確かめてから手続きします。
- 認められた後も、本業と副業の労働時間は通算されます。夜勤明けの勤務や守秘義務にも注意が必要です。
- 隠れて副業をすると、処分のリスクに加えて、労働時間や健康を管理できなくなります。
確認の3ステップ
① 自分の身分を確かめる(2章)
公務員か、民間の労働者か
↓
② 適用されるルールを読む(3章・4章)
民間:就業規則の副業の条文(許可制か、届出制か)
公務員:任命権者の許可の手続きと許可基準
↓
③ 届出・申請をしてから始める(3章)
働く日数・時間の上限、休息の取り方、守秘の約束を書面で示すこの記事は一般的な情報で、個別の判断ではありません。迷う場合は、勤務先の人事担当や社会保険労務士などの専門家に相談してください。
読みたい箇所から確認する
- 1. 看護師の副業は禁止できる?原則と例外
- 2. 最初に確認するのは「自分の身分」
- 3. 民間の病院・施設で働く場合の確認手順
- 4. 公務員の看護師の場合
- 5. 副業が認められても注意すること
- 6. 「副業はバレる?」より先に考えたいこと
- 7. 副業が認められないときの選択肢
- よくある質問
1. 看護師の副業は禁止できる?原則と例外
勤務時間外の過ごし方は、基本的に本人の自由
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、裁判例を踏まえて、「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由である」としています。看護師だから特別に副業が制限される、という法律上のルールはありません。
同省が公表しているモデル就業規則も、副業・兼業の条文を「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という書き出しにしています。モデル就業規則は各職場が就業規則を作るときのひな形で、そのまま使う義務はありませんが、国が示す標準的な考え方を表しています。
職場が副業を制限できる4つの場合
一方で、ガイドラインは、次の場合には職場が副業を禁止・制限できるとしています。
- 労務提供上の支障がある場合
- 業務上の秘密が漏えいする場合
- 競業により自社の利益が害される場合
- 自社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
どの場合に当たるかは、個別の事情によって判断されます。 この記事は当てはめを示すものではありません。届出や申請の前に、自分の予定について確認しておきたいのは次の点です。
確認すること | 関わる項目 |
|---|---|
本業の勤務と副業の間に、どれだけ間隔を空けるか | 1(労務提供上の支障) |
本業で知り得た患者の情報や内部の資料を、副業先で使わない形になっているか | 2(業務上の秘密) |
本業と同じ地域・同じ種類の施設で働くことになるか | 3(競業) |
いずれも、就業規則の定め方と職場の判断によります。判断が分かれそうな点は、届け出るときに自分から書いておくほうが、後から問題になりにくくなります。
就業規則に「禁止」と書かれていたら
就業規則に「副業を禁止する」とだけ書かれていても、ガイドラインの考え方に照らして、その規定がどこまで有効かは個別の事情で判断されます。ガイドラインは裁判例を紹介し、形式的に就業規則に抵触しても、職場秩序に影響せず、本業の労務提供に支障を生じさせない程度のものは禁止違反に当たらないとして、懲戒処分を認めなかった例があるとしています。そのうえで、懲戒処分を行うかどうかは、職場秩序に影響が及んだかなどの実質的な要素を考えて「慎重に判断することが考えられる」としています。
ただし、「規定が無効かもしれないから、届け出ずに始めてよい」と考えるのは危険です。規定の有効性を争うことになれば、時間も労力もかかります。
まずは、就業規則の条文を正確に読み、許可や届出の手続きがないかを確かめてください。「禁止」と書かれていても、別の規程で許可の手続きが定められていることがあります。
この章の出典
- 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(平成30年1月策定、令和4年7月改定) https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000962665.pdf
- 厚生労働省「副業・兼業」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html
- 厚生労働省 確かめよう労働条件「副業・兼業と労働条件」 https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/study/roudousya_fukugyoutokengyou.html
2. 最初に確認するのは「自分の身分」
副業のルールは、勤務先の種類によって根拠が変わります。民間の職員であれば就業規則が中心になり、公務員であれば法律の許可制度が適用されます。「病院の名前に『県立』や『国立』とついているから公務員」とは限らないので、次の表で確かめてください。
勤務先別の判定表
勤務先の種類 | 職員の身分 | 副業のルールの根拠 |
|---|---|---|
民間の病院・クリニック・介護施設・訪問看護ステーション(医療法人、社会福祉法人、株式会社など) | 民間の労働者 | 就業規則 |
自治体が直接運営する公立病院 | 地方公務員 | 地方公務員法38条(任命権者の許可) |
地方独立行政法人のうち「特定地方独立行政法人」が運営する病院 | 地方公務員 | 地方公務員法38条(任命権者の許可) |
上記以外の地方独立行政法人が運営する病院 | 地方公務員ではない | 法人の就業規則 |
独立行政法人のうち「行政執行法人」 | 国家公務員 | 国家公務員法103条・104条(許可) |
行政執行法人以外の独立行政法人(国立病院機構、地域医療機能推進機構(JCHO)、労働者健康安全機構(労災病院)など) | 国家公務員ではない | 法人の就業規則 |
国の機関が直接運営する病院・診療所 | 国家公務員 | 国家公務員法103条・104条(許可) |
独立行政法人通則法は、国家公務員とするのは「行政執行法人の役員及び職員」だと定めています。総務省の資料では、国立病院機構、地域医療機能推進機構、労働者健康安全機構は「中期目標管理法人」に分類されており、行政執行法人ではありません。名前に「国立」とあっても、副業のルールは法人の就業規則が中心になります。
地方独立行政法人が運営する病院は、その法人が「特定地方独立行政法人」かどうかで扱いが分かれます。総務省の資料では、特定地方独立行政法人の職員には地方公務員法が適用されるとされています。
自分の身分の調べ方
身分が分からないときは、辞令や雇用契約書で、誰の名前で採用されているかを見てください。知事、市長、病院事業管理者など、自治体や公的機関の任命権者の名前であれば、公務員の可能性が高くなります。法人の理事長名であれば、その法人が2章の表のどれに当たるかを確認します。
それでも分からない場合は、人事担当に「副業を考えているので、自分に適用される兼業のルールを教えてください」と聞くのが早道です。
この章の出典
- 独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第51条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000103
- 総務省「法人類型別個別法人の概要」(平成30年3月) https://www.soumu.go.jp/main_content/000906352.pdf
- 総務省「特定地方独立行政法人の役職員に係る地方公務員法の適用関係」 https://www.soumu.go.jp/main_content/000295846.pdf
- 地方公務員法(昭和25年法律第261号)第38条 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000261
- 国家公務員法(昭和22年法律第120号)第103条・第104条 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000120
3. 民間の病院・施設で働く場合の確認手順
就業規則の副業の条文を探す
就業規則の中で「副業」「兼業」「二重就業」「他の業務への従事」といった言葉を探します。規定の形は、おおむね次の3つに分かれます。
- 届出制:事前に届け出れば副業できる。職場は内容を確認し、1章の4つの場合などに当たるときに制限する
- 許可制:事前に申請し、許可を受けてから副業できる
- 禁止:副業を認めないと書かれている
就業規則は、職場が労働者に周知する義務を負っています(労働基準法106条)。手元にない場合は、閲覧場所を人事担当に確認してください。
就業規則がない職場の場合
就業規則の作成と届出が義務づけられているのは、常時10人以上の労働者を使用する事業場です(労働基準法89条)。小さなクリニックや訪問看護ステーションでは、就業規則がないこともあります。
その場合は、雇用契約書や労働条件通知書に副業についての記載がないかを確認してください。記載がなくても、本業に影響する働き方をすれば問題になり得るので、院長や管理者に口頭で伝えるだけでなく、日付と内容をメールなどで残しておくと、後で認識の食い違いが起きにくくなります。
届出前チェックリスト
ガイドラインは、職場が副業の内容を確認するときの項目として、副業先の事業内容、従事する業務、労働時間の通算の対象になるか、契約期間、労働日・労働時間などを例示しています。届出や申請の前に、次の項目を手元にそろえておくと手続きが進めやすくなります。
- □ 副業先の名称と事業内容(例:デイサービス、クリニックなど)
- □ 雇用契約か、業務委託か
- □ 従事する業務(例:利用者の健康状態の確認、服薬管理)
- □ 働く頻度と時間帯(例:月2回程度、本業の休日の9時〜17時)
- □ 1か月あたりの副業の労働時間の見込み
- □ 本業の勤務との間に空ける時間(夜勤明けは入れない、など)
- □ 本業の患者情報を使わないこと、競合しない業務であることの説明
単発の仕事を複数の施設で受ける予定なら、施設名をすべて事前に書き切れないことがあります。その場合は、範囲と上限で伝える方法を人事担当に相談してみてください。受け付けてもらえる書き方は職場によって異なります。
届出の記入例
副業・兼業の内容
・形態:雇用契約(1日単位の単発勤務)
・副業先:単発勤務のマッチングサービスを通じて応募する介護施設・クリニック等
(勤務先が決まるたびに、施設名と勤務日を報告します)
・業務:利用者の健康状態の確認、服薬管理など看護業務
・頻度と時間:本業の公休日に限り、月2回まで、1回8時間以内
・本業との調整:夜勤明けの日と夜勤前日には勤務しません
・その他:本業で知り得た患者情報は使用しません。
本業と競合する業務には従事しません。記入例の数字は一例です。自分の勤務表と体力に合わせて、無理のない上限を書いてください。
伝え方と、断られたときの確認
届出や申請では、なぜ副業をしたいかよりも、本業に支障が出ないことを具体的に示すほうが判断材料になります。勤務日数と時間の上限、夜勤明けを避けること、守秘義務を守ることを書面に入れておくと、職場も検討しやすくなります。
許可されなかった場合は、理由を確認してください。ガイドラインの4つの場合のどれに当たると判断されたのかが分かれば、時間や勤務先を変えて再申請できるかを考えられます(7章)。
許可が出たあと、初めての単発勤務に向けた準備は「初めての看護師単発バイト|求人選び・持ち物・当日の流れ」にまとめています。
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この章の出典
- 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定) https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000962665.pdf
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条・第106条 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
4. 公務員の看護師の場合
地方公務員は任命権者の許可が必要
地方公務員法38条1項は、職員が報酬を得て事業や事務に従事するには、任命権者の許可を受けなければならないと定めています。自治体直営の病院や、特定地方独立行政法人の病院で働く看護師が単発の看護業務などで報酬を得る場合は、この許可が必要になります。
許可の判断について、総務省は2025年6月11日の通知で、兼業を許可する際の基本的な原則として、次の3点を示しています。
- 職務遂行上、能率の低下を来すおそれがないこと
- 相反する利害関係を生じるおそれがなく、職務の公正を妨げないこと
- 職員及び職務の品位を損ねるおそれがないこと
同じ通知は、自治体に対して詳細で具体的な許可基準を定め、庁外にも公表するよう求めています。勤務先の自治体の許可基準がホームページなどで公表されていれば、まずそれを読み、申請に必要な書類と審査の観点を確認してください。
パートタイムの会計年度任用職員の場合
地方公務員法38条1項には、「非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない」というただし書きがあります。第22条の2第1項第2号に当たるのはフルタイムの会計年度任用職員なので、パートタイムの会計年度任用職員は、この許可制度の対象外です。
ただし、許可が不要でも、職務に専念する義務や信用を失墜させない義務は残ります。自治体によっては届出を求めていることもあるので、人事担当に確認してください。
国家公務員の場合
国家公務員法104条は、職員が報酬を得て事業に従事したり事務を行ったりするには、内閣総理大臣と所轄庁の長の許可が必要だと定めています。国の機関の病院や、行政執行法人で働く看護師は、所属先の人事担当に手続きを確認してください。
なお、人事院は、国家公務員の自営兼業(自ら事業を営む兼業)の制度の見直しを公表しています(令和7年12月公表、2026年4月からとされています)。これは自営の兼業に関する見直しで、他の施設に雇われて働く副業とは別の制度です。最新の内容は人事院のページで確認してください。
この章の出典
- 地方公務員法(昭和25年法律第261号)第38条 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000261
- 総務省「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について」(総行公第72号、令和7年6月11日) https://www.soumu.go.jp/main_content/001016561.pdf
- 総務省「地方公務員制度等|兼業」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/koumuin_seido/hukumu.html
- 国家公務員法(昭和22年法律第120号)第104条 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000120
- 人事院「自営兼業制度の見直しについて」(令和7年12月) https://www.jinji.go.jp/kouho_houdo/kisya/2512/jieikengyo_00001.html
5. 副業が認められても注意すること
本業と副業の労働時間は通算される
労働基準法38条1項は、事業場が異なる場合でも労働時間を通算すると定めています。本業と副業がどちらも雇用契約であれば、両方の労働時間を合わせて、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えるかどうかが判断されます。超えた部分は時間外労働になり、どちらの職場が割増賃金を払うかは、契約の順番などによって決まります。
たとえば、本業で8時間働いた日に単発の仕事を入れると、その日の単発の勤務時間は法定労働時間を超えるため、時間外労働として扱われ得ます。
このため、雇用契約で副業をする場合は、本業の職場に副業の労働時間を伝えておくことが前提になります。
なお、労働時間の合計とは別に、勤務と勤務の間隔や連続勤務日数をどう見るかという論点があります。日本看護協会が示している勤務編成の基準は「夜勤明けに単発バイトを入れてよい?|看護師の勤務間隔・連勤日数の目安」にまとめています。一方、ガイドラインは、フリーランスとして業務委託で働く場合など、労働基準法が適用されない働き方は通算の対象外としています。
なお、労働時間は通算される一方、社会保険は事業所ごとに判断されます。 同じ掛け持ちでも制度によって見方が違う点は「看護師の単発バイトと社会保険・雇用保険・有給休暇」で扱っています。
夜勤明けの勤務は避ける
夜勤明けの日に単発の仕事を入れれば、休息が取れないまま次の勤務に入ることになります。休息の確保は、本人の健康だけでなく、副業先での医療安全にも関わります。本業の勤務表が夜勤明けの翌日を休みにしていても、その休日は次の本業に備える時間でもあります。
副業の日程は、本業の勤務表が確定してから組むと、夜勤明けや連続勤務の前後を避けやすくなります。
守秘義務と競業
保健師助産師看護師法42条の2は、看護師が業務上知り得た人の秘密を漏らすことを禁じています。本業の患者の情報を副業先で話題にすることは避けてください。副業先で知った利用者の情報も同じです。
同条2項は「保健師、看護師又は准看護師でなくなつた後においても、同様とする」としています。 根拠条文と、複数の職場を行き来するときに起きやすい場面は「看護師の守秘義務はどの法律にあるか|単発で複数の職場を行き来するときの注意点」にまとめています。
本業と同じ地域・同じ種類の医療機関で働く場合は、就業規則の競業に関する定めを確認してください。本業の職場が気にするのは、患者の紹介や職員の引き抜きにつながらないかという点です。
税金は別に確認する
副業の収入がある場合、確定申告が必要になることがあります。必要かどうかは、本業と副業の収入の額やほかの所得によって変わるので、国税庁の「給与所得者で確定申告が必要な人」で確認してください。
単発で働いた分の源泉徴収・確定申告・住民税の仕組みは「看護師の単発バイトと税金|源泉徴収・確定申告・住民税」にまとめています。本業で年末調整をしても、単発で働いた分はそこに含まれていないことがあります。
この章の出典
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第38条 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定) https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000962665.pdf
- 保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第42条の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000203
- 国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900_qa.htm
6. 「副業はバレる?」より先に考えたいこと
検索すると「副業がバレない方法」を紹介する情報が見つかります。この記事では、その方法は紹介しません。本業の職場に副業が伝わるきっかけは一つではなく、隠し通せることを前提にした計画は立てられないからです。加えて、隠すこと自体に次のような不利益があります。
一つ目は、就業規則に違反した場合の処分のリスクです。許可が必要な公務員の場合は、許可を受けずに報酬を得て働くことが法律違反になります。
二つ目は、労働時間を管理できなくなることです。本業の職場が副業を知らなければ、通算した労働時間を把握できず、長時間労働の歯止めがかかりません。疲れが残った状態で本業の勤務に入れば、医療事故のリスクも高まります。
三つ目は、トラブルが起きたときに相談しにくくなることです。副業先でケガをした、本業の勤務に影響が出た、といった場面で、事情を説明するところから始めなければなりません。
7. 副業が認められないときの選択肢
条件を変えて再申請する
不許可の理由が本業への支障であれば、月の回数や1回の時間に上限を設ける、夜勤明けや夜勤前を避ける、といった条件を示して再申請する方法があります。競業が理由であれば、本業と異なる種類の施設や地域で働く形に変えられないかを考えてください。
本業の職場で働き方を見直す
副業の目的が収入であれば、本業での勤務日数や手当の見直しで補えるかを検討する方法もあります。目的が「ほかの職場を知りたい」であれば、研修や院外の勉強会など、副業以外の手段が使える場合もあります。
働く場所を選び直す
副業を認める職場に移るという選択肢もあります。副業の可否は、応募前の面接や見学の場で確認できます。ただし、副業の可否だけで職場を選ぶと、ほかの条件が合わないこともあります。本業としての働きやすさと合わせて判断してください。
よくある質問
1日だけの単発勤務でも、届出は必要ですか
就業規則が副業の届出や許可を求めていれば、1日だけでも対象になります。単発勤務は勤務先の施設との雇用契約なので、労働時間の通算の対象にもなります。回数が少ないから不要、とは判断せず、就業規則の定めに従ってください。単発勤務の始め方は「初めての看護師単発バイト」にまとめています。
報酬のないボランティアも副業に当たりますか
地方公務員法38条は「報酬を得て」従事する場合を許可の対象にしています。報酬を受け取らない活動がこれに当たるかは活動の内容によるので、交通費などの実費を受け取る場合も含めて、人事担当に確認してください。民間の場合は、就業規則の定め方によります。
パート勤務でも副業は制限されますか
民間のパート勤務でも、就業規則に副業の定めがあれば従う必要があります。自治体のパートタイムの会計年度任用職員は、地方公務員法38条の許可制度の対象外ですが、職務専念義務などは残ります(4章)。
看護師資格を使わない副業なら、届け出なくてよいですか
就業規則が副業全般を対象にしていれば、資格を使うかどうかにかかわらず届出や許可が必要です。仕事の内容よりも、本業に支障が出ないか、秘密や競業の問題がないかが判断の観点になります。
派遣で働いている場合は、誰のルールを確認すればよいですか
派遣で働く場合の雇用主は、派遣先の病院ではなく派遣会社です。副業のルールは、派遣会社の就業規則と雇用契約で確認してください。派遣先の職場のルールも、派遣先での勤務に関わる部分は守る必要があります。
まとめ
看護師の副業で最初に確かめるのは、「看護師だから」ではなく「自分の身分と勤務先のルールがどうなっているか」です。民間の職場なら就業規則の手続き、公務員なら任命権者の許可。どちらも、働く日数と時間、休息の取り方、守秘の約束を具体的に示すことが、認めてもらうための材料になります。
手続きを経て始めた副業は、本業の職場とも労働時間や体調の情報を共有できます。長く続けるには、その状態で始めるのが近道です。
この記事の主な一次情報
法令
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第38条・第89条・第106条 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 地方公務員法(昭和25年法律第261号)第38条 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000261
- 国家公務員法(昭和22年法律第120号)第103条・第104条 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000120
- 独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第51条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000103
- 保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第42条の2 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000203
厚生労働省
- 「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定) https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000962665.pdf
- 「副業・兼業」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html
- 確かめよう労働条件「副業・兼業と労働条件」 https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/study/roudousya_fukugyoutokengyou.html
- 「モデル就業規則」(令和7年12月版) https://www.mhlw.go.jp/content/001620507.pdf
総務省・人事院
- 「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について」(総行公第72号、令和7年6月11日) https://www.soumu.go.jp/main_content/001016561.pdf
- 「地方公務員制度等|兼業」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/koumuin_seido/hukumu.html
- 「特定地方独立行政法人の役職員に係る地方公務員法の適用関係」 https://www.soumu.go.jp/main_content/000295846.pdf
- 「法人類型別個別法人の概要」(平成30年3月) https://www.soumu.go.jp/main_content/000906352.pdf
- 人事院「自営兼業制度の見直しについて」(令和7年12月) https://www.jinji.go.jp/kouho_houdo/kisya/2512/jieikengyo_00001.html
国税庁
- 国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900_qa.htm
※いずれも2026年9月17日に確認(2026年9月29日に本文を見直し)。制度は改正されることがあります。
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