救急救命士と看護師は、別の法律で定められた別の国家資格です。 救急救命士は救急救命士法で、「医師の指示の下に、救急救命処置を行うことを業とする者」と定められています。看護師は保健師助産師看護師法(保助看法)で、「療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者」と定められています。

救急救命士法は、救急救命処置を保助看法の看護師の業務独占の特例として位置づけ、行う場所と時間に制限を置いています。令和3年の改正で、病院や診療所に着いてから入院するまでの間も救急救命処置を行えるようになり、病院・診療所に勤める救急救命士が、医師その他の医療従事者との連携などについて研修を受ける定めも置かれました。

この記事は、条文をもとに、定義、免許の取り方、できる処置、働く場所の違いと、病院で一緒に働くときに看護師が確かめることを整理します。個別の処置を誰が行ってよいかは、この記事では判断しません。

この記事の結論

  • 救急救命士は重度傷病者に、病院に搬送されるまでの間と、病院に着いて入院するまでの間に救急救命処置を行います。看護師の業務には、このような時間の区切りが法律にありません(1章)
  • 免許はどちらも厚生労働大臣の免許です。救急救命士の受験資格の一つ(34条2号)の学校には、看護師の学校・養成所が含まれます(2章)
  • 救急救命処置は、保助看法31条1項・32条の規定にかかわらず、診療の補助として行えるとされています(43条)。輸液・器具による気道確保・薬剤の投与は、医師の具体的な指示が必要です(3章)
  • 救急救命士の業務の場所は、原則として救急用自動車等です。病院で処置を行う救急救命士は、あらかじめ管理者が行う研修を受けます(4章・5章)
  • 救急救命士法の「特定行為」は、看護師の特定行為研修の「特定行為」とは別のものです(3章)

読みたい箇所から確認する

1. 救急救命士と看護師の定義の違い

先に答えを置きます。救急救命士は救急救命士法、看護師は保助看法で定められています。救急救命士の業務は「救急救命処置」で、対象の患者と時間が法律で区切られています。

救急救命士

看護師

根拠の法律

救急救命士法

保健師助産師看護師法

定義(業)

医師の指示の下に、救急救命処置を行うこと(2条2項)

傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うこと(5条)

対象

重度傷病者(症状が著しく悪化するおそれがあり、又は生命が危険な状態にある傷病者)

傷病者・じよく婦

時間

病院・診療所に搬送されるまでの間、又は到着し入院するまでの間(2条1項)

保助看法の定義に区切りはない

免許

厚生労働大臣の免許(3条)

厚生労働大臣の免許(7条3項)

救急救命処置は、法律で次のように定義されています。

気道の確保、心拍の回復その他の処置であって、当該重度傷病者の症状の著しい悪化を防止し、又はその生命の危険を回避するために緊急に必要なもの

入院しない場合は、病院・診療所に到着し、そこに滞在している間までとされています(2条1項のかっこ書き)。

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2. 救急救命士の免許と受験資格(看護師の学校との関係)

先に答えを置きます。救急救命士になるには、救急救命士国家試験に合格して免許を受けます。受験資格は34条の5つの号のいずれかで、看護師の免許そのものを条件とする号はありません。ただし2号の学校には、看護師の学校・養成所が含まれます。

救急救命士法34条の受験資格は、次の5つです(要約)。看護師に関係するのは2号です。

号

内容(要約)

1号

大学に入学できる者で、指定の学校又は救急救命士養成所で2年以上、必要な知識と技能を修得した者

2号

大学・高等専門学校・厚生労働省令で定める学校などで1年(高専は4年)以上修業し、厚生労働大臣の指定する科目を修めた者で、指定の学校又は救急救命士養成所で1年以上修得した者

3号

大学(短大を除く)で厚生労働大臣の指定する科目を修めて卒業した者

4号

消防法の救急業務の講習を修了し、省令で定める期間以上救急業務に従事した者で、指定の学校又は救急救命士養成所で1年(一部は6か月)以上修得した者

5号

外国の学校の卒業者・外国の免許の取得者で、厚生労働大臣が認定した者

2号の「厚生労働省令で定める学校、文教研修施設又は養成所」について、施行規則13条1号は、保助看法21条1号〜3号の規定で指定されている大学、学校又は看護師養成所を挙げています。

2号は、看護師の学校で1年以上修業したことに加えて、厚生労働大臣の指定する科目を修めたことと、救急救命士養成所などで1年以上修得したことを求めています。自分が受験資格に当たるかは、この記事では判断しません。入学を考えている学校・養成所に確かめてください。

保健師・助産師と看護師の免許の関係は、「保健師・助産師・看護師の違い」にまとめています。

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3. 救急救命士ができる処置と看護師との違い

先に答えを置きます。救急救命士法43条は、救急救命士が保助看法31条1項・32条の規定にかかわらず、診療の補助として救急救命処置を行えると定めています。そのうち省令で定める処置は、医師の具体的な指示がなければ行えません。

43条は、看護師の業務独占の特例です

保助看法31条1項は「看護師でない者は、第五条に規定する業をしてはならない」と定め、32条は准看護師について同じ形で定めています。救急救命士法43条1項は、次のように定めています。

救急救命士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として救急救命処置を行うことを業とすることができる。

特例の対象は、診療の補助として行う救急救命処置です。 条文は、看護師の業務のうち療養上の世話には触れていません。看護師の業務の範囲は、「看護師ができる医療行為・できない医療行為」にまとめています。

医師の「具体的な指示」が必要な処置

44条1項は、厚生労働省令で定める救急救命処置について、医師の具体的な指示を受けなければ行ってはならないとしています。施行規則21条が定めるのは次の3つです。

処置

心肺機能停止状態の患者

心肺機能停止状態でない患者

厚生労働大臣の指定する薬剤を用いた輸液

静脈路確保のためのものに限る

対象

厚生労働大臣の指定する器具による気道確保

対象

対象外

厚生労働大臣の指定する薬剤の投与

対象

対象

看護師は、保助看法37条で、主治の医師又は歯科医師の指示があった場合を除き、医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならないとされています。指示の要件の書き方が、2つの法律で違います。

「特定行為」という語は、2つの意味で使われています

救急救命士の分野では、44条1項の処置が「特定行為」と呼ばれます(条文の見出しは「特定行為等の制限」)。看護師の分野にも、保助看法37条の2の「特定行為」(特定行為研修の対象)があります。名前は同じですが、根拠の法律も中身も別のものです。 看護師の特定行為研修は、「認定看護師・専門看護師・特定行為研修の違い」の5章にまとめています。

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4. 救急救命士が処置を行える場所と時間

先に答えを置きます。救急救命士は、原則として救急用自動車等の中で業務を行います。例外は、救急用自動車等に乗せるまでの間と、病院・診療所に着いて入院するまでの間です。

場面

救急救命士法の定め

原則

救急用自動車等以外の場所で業務を行ってはならない(44条2項本文)

救急用自動車等とは

重度傷病者の搬送に使う救急用自動車・船舶・航空機で、医師の指示を受けるための通信設備などを備えたもの(施行規則22条)

例外①

搬送のため救急用自動車等に乗せるまでの間に、救急救命処置が必要と認められる場合(44条2項ただし書)

例外②

病院・診療所に到着し入院するまでの間に、救急救命処置が必要と認められる場合(44条2項ただし書)

例外②は、令和3年の改正(令和3年法律第49号、令和3年10月1日施行)で加わった部分です。 2条1項の定義にも「到着し当該病院若しくは診療所に入院するまでの間」が加わっています。

看護師の業務には、保助看法上、このような場所の制限はありません。

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5. 病院で救急救命士と一緒に働くとき

先に答えを置きます。病院・診療所に勤める救急救命士が、患者の到着から入院までの間に救急救命処置を行うには、あらかじめ管理者が行う研修を受けます。管理者は、院内に委員会を置き、その協議の結果に基づいて研修を行います。

定め

内容

44条3項

病院・診療所に勤務する救急救命士は、到着から入院までの間に救急救命処置を行おうとするときは、あらかじめ、管理者が実施する研修を受けなければならない。研修には、医師その他の医療従事者との緊密な連携の促進に関する事項が含まれる

施行規則23条

管理者は、救急救命士による救急救命処置の実施に関する委員会を院内に設置し、研修の内容についての委員会の協議の結果に基づいて研修を実施する

45条

救急救命士は、業務を行うに当たって、医師その他の医療関係者との緊密な連携を図り、適正な医療の確保に努める

救急外来で救急救命士と一緒に働く看護師が確かめておくとよいことは、次のとおりです。

確かめること

理由

その病院で救急救命士が救急救命処置を行う体制があるか

院内で行うには、研修と委員会が前提になる(44条3項・施行規則23条)

救急救命士が担当する処置と、看護師が担当する処置の分け方

救急救命士が行えるのは救急救命処置に限られる(3章)

医師の具体的な指示の受け方

輸液・気道確保・薬剤の投与は具体的な指示が必要(3章)

入院が決まった後の引き継ぎ

救急救命士の処置は入院するまでの間に限られる(4章)

記録の様式

救急救命士は救急救命処置録に記載する(6章)

分け方や手順は病院によって違います。勤務先の手順書や委員会の決定で確かめてください。

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6. 共通する義務(記録・守秘義務・名称)

先に答えを置きます。守秘義務と名称の使用制限は、どちらの資格にもあります。記録は、救急救命士法には救急救命処置録の規定があり、保助看法には看護師の看護記録の規定がありません。

義務

救急救命士

看護師

記録

救急救命処置を行ったときは、遅滞なく救急救命処置録に記載する。記載の日から5年間保存する(46条)

保助看法に看護記録の規定はない(医療法施行規則の「診療に関する諸記録」などで扱われる)

守秘義務

正当な理由がなく、業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。資格を失った後も同様(47条)

同じ形の規定(42条の2)

名称

救急救命士でない者は、救急救命士又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない(48条)

看護師でない者は、看護師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない(42条の3第3項)

救急救命処置録を誰が保存するかは、勤務する機関によって違います(46条2項)。看護記録の根拠は「看護記録の法的根拠と保存期間」の4章にまとめています。

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7. タメシビで想定していること

タメシビは、看護師・准看護師が、施設と直接雇用契約を結んで1日単位で働けるスポット勤務サービスです。応募が完了した時点で勤務が確定します(施設による承認・面接・書類選考はありません)。求人には、業務内容、必要な経験、持ち物、当日の流れを明示する方針です。

タメシビは2026年内のサービス開始に向けて準備中で、どの地域・どの種類の求人が掲載されるかは、これから決まります。

よくある質問

救急救命士と看護師の違いは何ですか

根拠の法律、業務の範囲、業務の場所と時間が違います。 救急救命士は救急救命士法で、重度傷病者に、搬送までの間と病院に着いて入院するまでの間、医師の指示の下に救急救命処置を行う資格です。看護師は保助看法で、療養上の世話又は診療の補助を行う資格です(1章)。

救急救命士は病院で働けますか

勤務できます。 救急救命士法44条3項は「病院又は診療所に勤務する救急救命士」を前提にした定めです。救急救命処置を行えるのは、患者が病院・診療所に到着してから入院するまでの間で、あらかじめ管理者が行う研修を受けます(5章)。救急救命処置以外の診療の補助は、43条の特例に入っていません(3章)。

救急救命士は点滴(静脈路確保)ができますか

厚生労働大臣の指定する薬剤を用いた輸液は、医師の具体的な指示を受けて行えます(44条1項・施行規則21条)。心肺機能停止状態の患者では、静脈路確保のためのものに限られます(3章)。

救急外来で、救急救命士に処置を頼んでよいですか

救急救命処置の範囲に入るか、患者の到着から入院までの間か、医師の具体的な指示があるか(必要な処置の場合)、その救急救命士が院内の研修を受けているか、で決まります(3章〜5章)。分け方は病院によって違うので、院内の手順書や委員会の決定で確かめてください。

看護師が救急救命士の資格を取るには、どうすればよいですか

救急救命士国家試験に合格して免許を受けます。 受験資格の2号の学校には看護師の学校・養成所が含まれますが、指定科目の修得と、救急救命士養成所などでの1年以上の修得も求められます(2章)。自分が当たるかは、学校・養成所に確かめてください。

救急救命士の「特定行為」と、看護師の「特定行為」は同じですか

別のものです。 救急救命士の特定行為は救急救命士法44条1項の処置(輸液・器具による気道確保・薬剤の投与)で、医師の具体的な指示が必要です。看護師の特定行為は保助看法37条の2の行為で、特定行為研修の対象です(3章)。

准看護師との関係はどうなりますか

43条は、看護師の31条1項と、准看護師の32条の両方の特例として書かれています(3章)。救急救命処置に限って、准看護師の業務独占の規定にもかかわらず行えるという形です。

まとめ

救急救命士と看護師は、別の法律で定められた別の国家資格です。救急救命士は、重度傷病者に、搬送までの間と病院に着いて入院するまでの間、医師の指示の下に救急救命処置を行います。救急救命処置は、保助看法の看護師・准看護師の業務独占の特例として、診療の補助の一部に位置づけられています。

業務の場所は原則として救急用自動車等で、病院で処置を行う救急救命士は、あらかじめ管理者が行う研修を受けます。救急外来で一緒に働くときは、勤務先の体制、処置の分け方、医師の指示の受け方、入院後の引き継ぎ、記録の様式を確かめてください。

この記事の主な一次情報

  • 救急救命士法(平成3年法律第36号)2条・3条・34条・43条〜48条
  • 救急救命士法施行規則(平成3年厚生省令第44号)13条・21条・22条・23条
  • 保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)5条・7条・31条・32条・37条・42条の2・42条の3

※2026年10月19日に e-Gov 法令検索で確認。法令は改正されることがあります。この記事は制度の紹介であり、個別の処置を誰が行ってよいか、個別の受験資格に当たるかについて判断を示すものではありません。

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