看護師の試用期間とは、常勤・パートで採用された後、本採用の前に置かれる期間のことで、法律に定義や長さの定めはなく、就業規則や労働契約で決まります。 求人票の「試用期間3か月」は、その施設の就業規則の定めが募集の段階で明示されたものです。

「試用期間中は解雇されやすいのか」「本採用にならないことがあるのか」という不安を見かけます。先に答えを書くと、試用期間中でも解雇は自由ではありません。 解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められ(労働契約法16条)、雇入れから14日を超えると解雇予告の手続きも必要になります(労働基準法21条)。

この記事は、試用期間について条文と公的資料が定めていることを整理し、求人票と労働条件通知書で確認する項目に変えます。 個別の解雇や本採用拒否が有効かどうかは、この記事では判定しません。最後に、試用期間とは「試す」主体が違う、1日単位で働く形(単発)の位置を示します。

この記事の結論

  • 試用期間は法律に定義も長さの定めもありません。 就業規則・労働契約で決まる期間で、厚生労働省のモデル就業規則は規定例を示しています(1章)
  • 公立病院の「条件付採用期間」は別の制度です。 地方公務員法22条により、採用はすべて条件付きで、6か月を良好な成績で勤務すると正式採用になります(1章)
  • 「試用期間」は、募集の段階で明示しなければならない労働条件の項目のひとつです。 試用期間中と本採用後で条件が違う場合は、両方を明示する定めです(2章)
  • 試用期間中でも、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(労働契約法16条)。雇入れから14日を超えると解雇予告の手続きが必要になります(労働基準法21条)(3章)
  • 試用期間中の賃金が本採用後と違う場合は、その違いが明示されます。有給休暇の6か月は雇入れの日から数えます(4章)
  • 求人票で確認するのは、有無・長さ・条件の違い・延長の定め・本採用の判断の時期の5点です(5章)
  • 試用期間は使用者が見る期間、単発は看護師が1日で見る形です。 「試す」の主体が違います(6章)

読みたい箇所から確認する

1. 試用期間とは——法律に定義も長さの定めもなく、「3か月」は施設の数字

先に答えを置きます。労働基準法にも労働契約法にも「試用期間」の定義はなく、長さの上限も定められていません。試用期間は、施設の就業規則や労働契約で設けられる、本採用の前の期間です。

就業規則の規定例

厚生労働省の「モデル就業規則」は、試用期間の規定例を示しています。採用した日から一定の期間を試用期間とすること、会社が特に認めたときは短縮または設けないことがあること、試用期間中に不適格と認めた者は解雇することがあること(入社後14日を経過した者は解雇の手続きによる)、そして次の一文です。

試用期間は、勤続年数に通算する。

試用期間は、労働契約の外にある「仮の期間」ではなく、労働契約の中の期間です。 雇入れの日は試用期間の初日で、勤続年数はそこから数える、という規定例になっています。

長さについて公的資料が書いていること

同じモデル就業規則の解説は、試用期間の長さについて次のように書いています。

試用期間を設ける場合にその期間の長さに関する定めは労基法上ありませんが、労働者の地位を不安定にすることから、あまりに長い期間を試用期間とすることは好ましくありません。

民間の病院・施設の求人票で見かける「3か月」「6か月」は、法律の数字ではなく、その施設の就業規則の数字です。 長さが適切かどうかは個別の事情によるため、この記事では判定しません。延長の定めがある場合の確認は5章にまとめています。

公立病院の「条件付採用期間」は別の制度です

市立病院・県立病院など、地方公務員として採用される場合は、試用期間ではなく「条件付採用期間」があります。地方公務員法22条は、職員の採用をすべて条件付きのものとし、6か月の期間を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに正式採用になると定めています。募集要項に「条件付採用期間6か月」とあるのは、この条文の数字です。

条件付採用は法律で期間が定められた制度で、就業規則で決まる試用期間とは根拠が違います。 この記事の2章以降は民間の病院・施設の試用期間を扱い、公務員の条件付採用期間には当てはめません。公務員の看護師の兼業制限は「看護師の副業禁止はどこまで有効?」の4章にまとめています。

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2. 募集の段階で明示される項目に「試用期間」がある

先に答えを置きます。労働者を募集するとき、施設や職業紹介事業者は労働条件を明示しなければなりません(職業安定法5条の3)。その最低限の項目の中に「試用期間」が含まれています。

最低限明示しなければならない項目

厚生労働省のリーフレット「労働者を募集する企業の皆様へ」は、募集時に最低限明示しなければならない労働条件として、業務内容、契約期間、試用期間、就業場所、就業時間・休憩時間・休日・時間外労働、賃金、加入保険、募集者の氏名または名称、受動喫煙防止措置の状況を挙げています。

つまり、試用期間の有無は、募集の段階で示されるべき項目です。 求人票に書かれていなければ、問い合わせてよい項目で、「試用期間なし」も明示の一つの形です。

試用期間中と本採用後で条件が違う場合

同じリーフレットは、次のように書いています。

試用期間と本採用が一つの労働契約であっても、試用期間中の労働条件が本採用後の労働条件と異なる場合は、試用期間中と本採用後のそれぞれの労働条件を明示しなければなりません。

試用期間中の賃金や手当が本採用後と違う場合、「本採用後の条件」だけを書いた求人票では足りない、という定めです。 募集の段階で明示した条件を変更する場合は、変更内容の明示も求められています。

契約の段階の明示は別にあります

募集の段階の明示(職業安定法5条の3)とは別に、労働契約を結ぶ段階の明示(労働基準法15条)があります。2段階の違いと、労働条件通知書で確認する項目は「単発バイトに労働条件通知書はある?」の2章にまとめています。

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3. 試用期間中でも解雇は自由ではない——理由の線、14日の線、本採用にならない場合

先に答えを置きます。試用期間中の解雇には、2本の線があります。「理由」の線は労働契約法16条で、試用期間中も適用されます。「手続き」の線は労働基準法20条・21条で、雇入れから14日を超えると解雇予告が必要になります。

理由の線——労働契約法16条

労働契約法16条の条文です。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

東京都の労働資料「モデル就業規則」の解説は、試用期間についてこの条文が適用されることを次のように書いています。

試用期間内の解雇についても労契法16条の規定は適用されるため、その理由は、客観的に合理的な理由であり社会通念上相当である必要があります。

「試用期間だから」という理由だけで解雇できる、という定めはありません。 どの理由が「客観的に合理的」で「社会通念上相当」に当たるかは個別の事情によるため、この記事では判定しません。

手続きの線——労働基準法20条・21条

労働基準法20条は、解雇する場合に30日以上前の予告か、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を求めています。21条は、この予告が適用されない者を列挙しており、その中に「試の使用期間中の者」があります。ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は、予告が適用されます。 厚生労働省の「スタートアップ労働条件」Q&Aは、「試の使用期間中の者」は解雇予告の例外に当たるが、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合には解雇予告の制度が適用される、と説明しています。沖縄労働局の労働相談事例も、試用期間中の者でも14日を超えて引き続き使用された後に解雇する場合は、20条の予告手続きが必要であると説明しています。

2本の線を並べると

線

根拠

試用期間中の扱い

理由

労働契約法16条

最初の日から適用される。 客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要

手続き

労働基準法20条・21条

雇入れから14日以内は予告の適用除外。14日を超えると30日以上前の予告か予告手当が必要

「本採用にならない」場合も、使用者の側から労働契約を終わらせることに変わりはなく、この2本の線が関わります。 個別の本採用拒否が有効かどうかは、この記事では判定しません。疑問がある場合の窓口は、都道府県労働局・労働基準監督署の総合労働相談コーナーです。

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4. 試用期間中の労働条件——賃金の違い、有給の起算、保険

先に答えを置きます。試用期間中の労働条件が本採用後と違う場合は、その違いが明示されます。有給休暇の6か月は雇入れの日から数えます。保険は、募集時の明示項目「加入保険」の欄で確認します。

賃金が違う場合

試用期間中の賃金や手当を本採用後と変えている施設があります。2章のとおり、違う場合は試用期間中と本採用後のそれぞれの条件を明示する定めです。違いの有無と中身は、求人票と労働条件通知書で確認します。 金額の相場は、この記事では扱いません。

有給休暇の6か月は、雇入れの日から

労働基準法39条1項は、雇入れの日から6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に10労働日の有給休暇を与えると定めています。起算は雇入れの日で、試用期間の初日が雇入れの日です。 モデル就業規則の規定例「試用期間は、勤続年数に通算する」も、これに沿ったものです。条文の要素は「看護師の単発バイトと社会保険・雇用保険・有給休暇」の4章にまとめています。

保険は「加入保険」の欄で確認する

募集時に明示される項目に「加入保険」があります(2章)。健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険に加入するかどうかは、試用期間かどうかではなく、雇用契約と労働時間などの要件で決まります。 要件の整理は同じ記事の2章・3章にまとめています。個別の加入の要否は、この記事では判定しません。

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5. 求人票・労働条件通知書で確認する5つの項目

先に答えを置きます。確認するのは5つです。順番に見ると、確認の漏れを減らせます。

項目

見る場所

確認すること

① 有無

求人票の「試用期間」欄

「あり」「なし」のどちらか。空欄なら問い合わせる(2章)

② 長さ

同じ欄、就業規則

何か月か。法律の数字ではなく施設の数字(1章)

③ 条件の違い

求人票、労働条件通知書、面接での確認

試用期間中の賃金・手当・勤務時間が本採用後と違うか。違うなら両方が明示されているか(2章・4章)。夜勤の有無と開始時期、受け持ちの範囲が試用期間中は違う施設もある

④ 延長の定め

就業規則

延長することがあるか、その場合の上限と理由が書かれているか

⑤ 本採用の判断の時期と方法

就業規則、面接での確認

いつ、誰が、何を見て本採用を決めるか。評価の面談があるか

④と⑤は、求人票には書かれていないことがある項目です。 就業規則の周知義務(労働基準法106条)は入職後の労働者に対するものですが、応募の段階で面接や見学の場で「試用期間の規定を確認したい」と伝えることは妨げられません。

確認した結果の扱い

確認した結果、試用期間が長い、延長の上限がない、条件の違いが大きい、といった場合に応募するかどうかは、ご自身の判断です。この記事は確認する項目を示すところまでで、応募の可否を判定しません。 募集時の明示と実際の条件が違っていた場合の定めと相談先は「単発バイトに労働条件通知書はある?」の5章にまとめています。

直接応募で進める場合の各段階の確認項目は「看護師の直接応募とは」の6章に、有期契約で入る場合の期間・更新の確認は「看護師の短期バイトとは」の6章にまとめています。

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6. 「試す」のは誰か——試用期間と、1日働いて確かめる形

先に答えを置きます。試用期間は、使用者が本採用の前に労働者を見る期間です。看護師の側が職場を見る期間ではありません。入職の前に、看護師の側が職場を確かめる形は別にあります。

試用期間は「使用者が見る期間」です

1章のモデル就業規則の規定例は、「試用期間中に労働者として不適格と認めた者は、解雇することがある」という書き方です。見る側(使用者)と見られる側(労働者)が決まっている期間です。 試用期間中に看護師の側が「合わない」と感じた場合、退職の手続きは通常の退職と同じで、試用期間だから辞めやすいという定めはありません(FAQ)。

看護師の側が確かめる形

入職の前に職場を確かめる方法として、見学、紹介予定派遣、トライアル雇用、そして1日単位で働く単発があります。それぞれの仕組み・期間・既卒の看護師が使えるかの比較は「看護師のお試し勤務」の3章にまとめています。 この記事は、試用期間との違いを1点だけ書きます。

試用期間

1日単位で働く形(単発)

「試す」主体

使用者

看護師

契約

本採用を前提とした労働契約の中の期間

その日限りの直接雇用契約

合わなかった場合

退職の手続き(通常と同じ)

次の日の契約がない

単発で1日働いた施設に、その後常勤・パートで応募することを妨げる制度はありません。 ただし、採用するかどうか、試用期間をどう設けるかは施設が決めることです。単発で働けば試用期間が短くなる、採用されやすくなる、とこの記事で言うことはしません。初めて単発で働く日の流れは「初めての看護師単発バイト」に、単発の働き方の全体像は「看護師の単発バイト完全ガイド」にまとめています。

7. タメシビで想定していること

タメシビは、看護師・准看護師が、施設と直接雇用契約を結んで1日単位で働けるスポット勤務サービスです。応募後、施設が内容を確認して勤務が確定します(事前の面接・書類選考はありません)。求人には、業務内容、必要な経験、持ち物、当日の流れを明示する方針です。

この記事の位置づけで言えば、タメシビは、試用期間に入る前に、看護師の側が1日働いて職場を確かめる形です。常勤・パートの採用をあっせんするサービスではなく、試用期間の長さや本採用の判断に関わるものでもありません。働いてから、その職場で続けるかをご自身で選べることを、サービスの前提に置いています。

タメシビは2026年内のサービス開始に向けて準備中で、どの地域・どの種類の求人が掲載されるかは、これから決まります。

よくある質問

試用期間中に解雇されることはありますか

制度上、試用期間中の解雇はありえますが、自由ではありません。 客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要で(労働契約法16条)、雇入れから14日を超えると解雇予告の手続きも必要です(労働基準法21条)(3章)。個別の解雇が有効かどうかは、総合労働相談コーナーに相談してください。

本採用にならないと言われました

使用者の側から労働契約を終わらせることに変わりはなく、3章の2本の線が関わります。退職時の証明書に、解雇の理由を記載するよう請求できます(労働基準法22条。「看護師を辞めたいと思ったとき」の5章)。個別の有効性はこの記事では判定しません。窓口は総合労働相談コーナーです。

公立病院の「条件付採用期間」は試用期間と同じですか

別の制度です。 条件付採用期間は地方公務員法22条で定められ、6か月の期間を良好な成績で勤務すると正式採用になります(1章)。就業規則で長さが決まる民間の試用期間とは根拠が違うため、この記事の3章以降の整理はそのまま当てはめません。詳細は募集要項と採用窓口で確認してください。

試用期間は何か月までですか

法律に上限の定めはありません(1章)。厚生労働省のモデル就業規則の解説は、あまりに長い期間は好ましくないとしています。求人票の数字は施設の就業規則の数字なので、延長の定めと合わせて確認してください(5章)。

試用期間中は給料が低いと聞きました

試用期間中の賃金を本採用後と変えている施設があります。変えている場合は、試用期間中と本採用後のそれぞれの条件を募集の段階で明示する定めです(2章)。求人票に本採用後の条件しか書かれていない場合は、試用期間中の条件を問い合わせてください。金額の相場はこの記事では扱っていません。

試用期間中は社会保険に入れないのですか

加入するかどうかは、試用期間かどうかではなく、雇用契約と労働時間などの要件で決まります(4章)。募集時に明示される「加入保険」の欄で確認し、要件は「看護師の単発バイトと社会保険・雇用保険・有給休暇」にまとめています。個別の要否はこの記事では判定しません。

試用期間中に辞めたくなったら、すぐ辞められますか

退職の手続きは通常の退職と同じで、試用期間だから辞めやすいという定めはありません。厚生労働省のモデル就業規則の解説は、期間の定めのない労働契約について、労働者はいつでも解約の申入れができ、申入れから2週間を経過すると終了すると説明しています。就業規則に退職の申出の時期の定めがある場合は、その定めも確認してください(「看護師を辞めたいと思ったとき」の5章)。心身に不調がある場合は、手順より先に受診してください。

単発で働いてから応募すれば、試用期間はなくなりますか

試用期間を設けるかどうかは施設の就業規則で決まり、単発で働いたことで変わるという定めはありません(6章)。単発で確かめられるのは、その日の実務(申し送り、記録、休憩、人員体制)で、試用期間の有無や本採用の判断とは別のものです。

まとめ

試用期間は、法律に定義も長さの定めもない、労働契約の中の期間です。求人票の数字は施設の就業規則の数字で、「試用期間」は募集の段階で明示しなければならない項目のひとつ。試用期間中と本採用後で条件が違う場合は、両方を明示する定めです。

試用期間中でも解雇は自由ではありません。 理由の線(労働契約法16条)は最初の日から適用され、手続きの線(労働基準法20条・21条)は雇入れから14日を超えると適用されます。本採用にならない場合も、同じ2本の線で見ます。

求人票と労働条件通知書で確認するのは、有無・長さ・条件の違い・延長の定め・本採用の判断の時期の5点。有給の6か月は雇入れの日から数え、保険は「加入保険」の欄で確認します。

そして、試用期間は使用者が見る期間で、看護師の側が職場を見る期間ではありません。 入職の前に看護師の側が確かめる形として、見学や紹介予定派遣のほかに、1日単位で働く単発があります。

この記事の主な一次情報

法令

公的資料

※いずれも2026年10月5日に確認。法令・公的資料は改正・改訂されることがあります。この記事は条文・公的資料の紹介であり、個別の解雇・本採用拒否の有効性、社会保険の加入の要否、応募の可否について判断を示すものではありません。賃金の相場は扱っていません。

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