看護師の資格で開設できる施設は、法律で限られています。 診療所は医師でない人が開設するときは都道府県知事の許可が要り、管理者は医師でなければなりません。助産所は助産師の業務の場所です。

看護師が「開業」を考えるときに出てくる訪問看護ステーションは、介護保険・健康保険の指定を受けるときに、申請者が法人などであることが求められます。 管理者は、原則として保健師又は看護師です。

この記事は、医療法・介護保険法・健康保険法と指定の基準の条文をもとに、看護師の資格で開設できるもの、訪問看護ステーションを立ち上げるときの要件、個人で働く形を整理します。開業資金や収入、税の手続きは扱いません。 独立を勧める記事でもありません。

この記事の結論

  • 診療所:医師でない人が開設するときは都道府県知事の許可が要り、管理者は医師です(医療法7条1項・10条1項)。看護師は管理者になれません(1章・3章)
  • 助産所:助産師が業務を行う場所です。助産師が開設したときは10日以内に届け出ます(医療法2条1項・8条)(3章)
  • 訪問看護ステーション:介護保険の指定は申請者が法人であることが基準、健康保険の指定は申請者が地方公共団体、医療法人、社会福祉法人その他厚生労働大臣が定める者であることが要件です(2章)
  • 介護保険の指定では、看護職員が常勤換算で2.5以上(うち1名は常勤)、管理者は保健師又は看護師(やむを得ない理由がある場合を除く)です(2章)
  • 個人事業主として業務委託で働く形は、雇用とは別の契約です。税・開業届はこの記事では扱いません(4章)

読みたい箇所から確認する

1. 看護師の資格で開設できるもの・できないもの

先に答えを置きます。看護師が診療所や助産所を開設しようとするときは、都道府県知事の許可が要ります。届出だけで開設できるのは医師・歯科医師・助産師です。訪問看護ステーションは、法人として指定を受け、看護師が管理者になる形があります。

施設

開設

管理者

根拠

診療所

医師(臨床研修等修了医師)・歯科医師でない人が開設するときは、都道府県知事の許可

医業をなす場合は臨床研修等修了医師

医療法7条1項・10条1項

助産所

助産師でない人が開設するときは、都道府県知事の許可。助産師が開設したときは10日以内に届出

助産師(11条)

医療法2条1項・7条1項・8条・11条

訪問看護ステーション(介護保険の指定)

申請者は法人(条例で定める者。省令の基準は「法人であること」)

保健師又は看護師(やむを得ない理由がある場合を除く)

介護保険法70条2項1号・3項、施行規則126条の4の2、指定居宅サービス等基準61条2項

訪問看護(健康保険の指定)

申請者は地方公共団体、医療法人、社会福祉法人その他厚生労働大臣が定める者

(この記事では扱わない)

健康保険法89条4項1号

開業・起業・独立には、施設を開設することと、事業を始めることの両方が含まれます。 この記事では、法律が開設や指定の要件を定めている施設と、個人で業務委託を受けて働く形(4章)を分けて整理します。

この章の出典

2. 訪問看護ステーションを立ち上げるときの法律上の要件

先に答えを置きます。訪問看護ステーションは、介護保険の指定を受けると、健康保険の指定も受けたものとみなされる形があります(健康保険法89条2項)。介護保険の指定は申請者が法人であることが基準で、看護職員の員数と管理者の要件があります。

介護保険の指定:申請者は法人

介護保険法70条2項1号は、申請者が「都道府県の条例で定める者でないとき」は指定をしてはならないとしています。同条3項は、この条例を厚生労働省令で定める基準に従って定めるとしています。その基準を定めた介護保険法施行規則126条の4の2は、次のとおりです。

法第七十条第三項の厚生労働省令で定める基準は、法人であることとする。

ただし書で、病院・診療所により行われる訪問看護などの指定の申請は、この限りでないとされています。病院・診療所ではない訪問看護ステーションは、法人であることが基準です。

健康保険の指定:申請者の範囲

健康保険法88条1項は、厚生労働大臣が指定する「指定訪問看護事業者」から訪問看護を受けたときに訪問看護療養費を支給すると定めています。89条4項1号は、申請者が次に当たらないときは指定をしてはならないとしています。

地方公共団体、医療法人、社会福祉法人その他厚生労働大臣が定める者

「厚生労働大臣が定める者」の範囲は、この記事では扱いません。申請先で確かめてください。

あわせて89条2項は、介護保険の指定居宅サービス事業者などの指定(訪問看護事業を行う者のうち厚生労働省令で定める基準に該当するものに限る)があったときは、その指定の際、健康保険の指定訪問看護事業者の指定があったものとみなすとしています。別段の申出をしたときは、この限りでないとされています。

員数と管理者(介護保険の指定基準)

項目

定め

看護職員

保健師、看護師又は准看護師を常勤換算方法で2.5以上(60条1項1号イ)

常勤

看護職員のうち1名は常勤(60条2項)

管理者

専らその職務に従事する常勤の管理者を置く。管理上支障がない場合は、そのステーションの他の職務や他の事業所等の職務に従事できる(61条1項)

管理者の資格

保健師又は看護師。ただし、やむを得ない理由がある場合はこの限りでない(61条2項)

管理者の知識・技能

適切な指定訪問看護を行うために必要な知識及び技能を有する者(61条3項)

准看護師は看護職員の員数には入りますが、管理者の資格(61条2項)には入っていません。 訪問看護の業務の中身と、単発の求人との関係は「訪問看護に単発の求人が少ない理由」にまとめています。

この章の出典

3. 診療所と助産所の開設

先に答えを置きます。医師でない人が診療所を開設するには都道府県知事の許可が要り、管理者は医師です。助産所は助産師が業務を行う場所で、助産師が開設したときは届出です。

診療所

医療法7条1項は、臨床研修等修了医師・臨床研修等修了歯科医師でない人が診療所を開設しようとするときは、開設地の都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)の許可を受けなければならないとしています。

10条1項は、診療所の開設者は、医業をなす場合は臨床研修等修了医師に管理させなければならないとしています。看護師は、診療所の管理者になれません。

助産所

医療法2条1項は、助産所を「助産師が公衆又は特定多数人のためその業務(病院又は診療所において行うものを除く。)を行う場所」と定めています。

8条は、助産師が助産所を開設したときは、開設後10日以内に所在地の都道府県知事に届け出なければならないとしています。助産師でない人が助産所を開設するときは、7条1項により許可が要ります。

助産師の資格は、助産師国家試験と看護師国家試験に合格して受ける免許です。保健師・助産師との違いは「保健師・助産師・看護師の違い」にまとめています。

この章の出典

4. 看護師が個人事業主として働く形

先に答えを置きます。看護師が個人事業主として働く形には、施設や事業者から業務委託を受けて働く形があります。業務委託は雇用契約とは別の契約で、労働時間や保険の扱いが変わります。

業務委託と雇用の違いは「看護師の単発求人の「業務委託」とは」、在宅でできる仕事と、資格でできること・できないことの線は「看護師の在宅ワーク」、雇用型と非雇用型の副業の分け方は「看護師の副業の種類と選び方」にまとめています。

業務委託を受ける前に、契約書で次の点を確かめておくと、あとで食い違いを避けられます。

確かめること

例

業務の範囲

どの行為を、誰の指示で行うか(医師の指示が要る行為は5章)

報酬と支払い

報酬の決め方、支払日、交通費の扱い

事故のときの責任

契約上の責任の分担、賠償責任保険の要否

契約の終わり方

期間、解約の申し出の方法

事業所得か雑所得か、開業届が要るかといった税の手続きは、この記事では扱いません。 税務署で確かめてください。

この章の出典

  • 関連記事の各章の出典を参照

5. 独立を考える前に確かめること

先に答えを置きます。勤めながら準備する場合は勤務先の副業・兼業の規定を、業務委託を受ける場合は契約の中身を、看護の行為を行う場合は医師の指示の要否を確かめます。

確かめること

理由

勤務先の就業規則の副業・兼業の規定

勤めながら事業の準備や業務委託を受ける場合に関わる(看護師の副業禁止はどこまで有効?)

業務委託の契約の中身(業務の範囲・報酬・事故のときの責任)

雇用とは扱いが違う(4章)

行う行為に主治医の指示が要るか

保助看法37条は、主治の医師又は歯科医師の指示があった場合を除き、医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならないとしている

指定を受ける場合の申請先と基準

介護保険は都道府県の条例、健康保険は厚生労働大臣の指定(2章)

看護師が行える行為の範囲は、「看護師ができる医療行為・できない医療行為」にまとめています。

この章の出典

6. タメシビで想定していること

タメシビは、看護師・准看護師が、施設と直接雇用契約を結んで1日単位で働けるスポット勤務サービスです。応募が完了した時点で勤務が確定します(施設による承認・面接・書類選考はありません)。求人には、業務内容、必要な経験、持ち物、当日の流れを明示する方針です。

タメシビは2026年内のサービス開始に向けて準備中で、どの地域・どの種類の求人が掲載されるかは、これから決まります。

よくある質問

看護師は開業できますか

看護師が診療所や助産所を開設しようとするときは、都道府県知事の許可が要ります(医療法7条1項。届出で開設できるのは医師・歯科医師・助産師)。診療所の管理者は医師です。訪問看護ステーションは、法人として指定を受け、看護師が管理者になる形があります(1章)。

看護師1人で訪問看護ステーションを開けますか

介護保険の指定基準では、看護職員を常勤換算で2.5以上置くことが求められます(60条1項1号イ)。1人ではこの員数を満たしません。あわせて、申請者は法人であることが基準です(2章)。

個人のまま訪問看護ステーションを開けますか

介護保険の指定は、申請者が法人であることが基準です(介護保険法施行規則126条の4の2)。健康保険の指定も、申請者を地方公共団体、医療法人、社会福祉法人その他厚生労働大臣が定める者としています(健康保険法89条4項1号。2章)。

准看護師は訪問看護ステーションの管理者になれますか

指定基準61条2項は、管理者を保健師又は看護師としています(やむを得ない理由がある場合を除く)。准看護師は看護職員の員数には入ります(2章)。

個人事業主になるには開業届が要りますか

この記事では、税の手続きは扱いません。 税務署で確かめてください(4章)。

まとめ

看護師が診療所や助産所を開設しようとするときは、都道府県知事の許可が要ります。診療所の管理者は医師で、助産所は助産師の業務の場所です。

訪問看護ステーションは、介護保険の指定では申請者が法人であることが基準で、看護職員は常勤換算で2.5以上、管理者は原則として保健師又は看護師です。健康保険の指定にも申請者の要件があります。個人事業主として業務委託で働く場合は、契約と税の扱いを窓口で確かめてください。

この記事の主な一次情報

  • 医療法(昭和23年法律第205号)2条・7条・8条・10条・11条
  • 介護保険法(平成9年法律第123号)70条、介護保険法施行規則 126条の4の2
  • 健康保険法(大正11年法律第70号)88条・89条
  • 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)60条・61条
  • 保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)37条

※2026年10月19日に e-Gov 法令検索で確認。法令は改正されることがあります。この記事は制度の紹介であり、個別の事業計画が適法か、指定を受けられるかについて判断を示すものではありません。

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タメシビは2026年内のサービス開始に向けて準備中で、現在はLINEで先行登録を受け付けています。現時点で求人への応募を受け付けているものではありません。求人が公開されたときにお知らせを受け取りたい方は、先行登録をご利用ください。

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