「訪問看護を1日だけ試せないか」と探すと、求人がほとんど見つかりません。デイサービスや訪問入浴には単発の募集があるのに、訪問看護にはなぜ少ないのか。
結論から言うと、制度が単発を禁じているわけではありません。 人員基準は常勤換算で定められており、非常勤を排除していません。少ない理由は、訪問看護が継続的な関係を前提に設計されているところにあります。
この記事では、その構造を条文から整理したうえで、訪問看護に近づくための現実的なルートをまとめました。
この記事の結論
- 訪問看護ステーションの人員基準は「常勤換算方法で、二・五以上」です。常勤換算なので、非常勤も員数に入ります。制度上、単発の勤務が禁じられているわけではありません(1章)。
- 少ない理由は、主治医の指示を文書で受け、訪問看護計画書に基づいて提供するという継続性を前提にした設計にあります(2章)。
- もう1つの理由は、訪問に1人で行くことです。訪問入浴のようにチームで動く形ではありません(3章)。
- 訪問看護に関心がある場合、同行訪問の求人、訪問入浴、非常勤で週1回といったルートがあります(4章)。
読みたい箇所から確認する
- 1. 人員基準は、非常勤を排除していない
- 2. 少ない理由は「継続性を前提にした設計」
- 3. もう1つの理由 ― 訪問には1人で行く
- 4. 訪問看護に近づくためのルート
- 5. 単発の求人を見つけたときに確認したいこと
- 6. 向いている場合・注意したい場合
- 7. タメシビで想定していること
- よくある質問
1. 人員基準は、非常勤を排除していない
まず、制度の建て付けから確認します。指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)60条1項は、訪問看護ステーションについて次のように定めています。
一 指定訪問看護ステーション
イ 保健師、看護師又は准看護師(以下この条において「看護職員」という。) 常勤換算方法で、二・五以上となる員数
ロ 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士 指定訪問看護ステーションの実情に応じた適当数
そして同条2項が、次のように続きます。
前項第一号イの看護職員のうち一名は、常勤でなければならない。
ここで確認しておきたいのは、「常勤換算方法で、二・五以上」という書き方です。常勤換算は、非常勤職員の勤務時間を合算して常勤職員の何人分にあたるかを計算する方法です。つまり、非常勤の看護職員も員数に数えられます。
常勤でなければならないのは、このうち1名です。残りは非常勤で構成することができます。
なお、管理者については61条が定めており、1項が「専らその職務に従事する常勤の管理者を置かなければならない」(管理上支障がない場合は他の職務に従事できる旨のただし書あり)、2項が「指定訪問看護ステーションの管理者は、保健師又は看護師でなければならない」(やむを得ない理由がある場合のただし書あり)としています。
この時点では、単発の勤務を制度が排除している様子はありません。 では、なぜ求人が少ないのか。次の章がその答えです。
この章の出典
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第60条・第61条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037
2. 少ない理由は「継続性を前提にした設計」
訪問看護は、その日その場で完結するサービスとして設計されていません。同じ基準の69条と70条に、それがはっきり表れています。
主治医の指示を文書で受ける
69条(主治の医師との関係)は、次のように定めています。
- 1項:管理者は、主治の医師の指示に基づき適切な指定訪問看護が行われるよう必要な管理をしなければならない
- 2項:事業者は、主治の医師による指示を文書で受けなければならない
- 3項:事業者は、主治の医師に訪問看護計画書及び訪問看護報告書を提出し、主治の医師との密接な連携を図らなければならない
つまり、利用者ごとに主治医からの文書による指示があり、それに基づいて提供する仕組みです。
訪問看護計画書に基づいて提供する
70条(訪問看護計画書及び訪問看護報告書の作成)は、訪問看護計画書について、利用者の希望、主治の医師の指示及び心身の状況等を踏まえて、療養上の目標と具体的なサービスの内容を記載して作成することを定めています。居宅サービス計画が作成されている場合は、その内容に沿って作成することとされています。
さらに、作成した計画書は主要な事項について利用者またはその家族に説明して同意を得ること、作成後は利用者に交付することも定められています。
なお、同条は訪問看護計画書の作成主体を「看護師等(准看護師を除く。)」としています。准看護師の業務範囲については「准看護師の単発バイト|応募できる求人とできない求人の見分け方」にまとめています。
訪問看護は、作成する書類の名前が条文に出てくるサービスです。 病院の看護記録や介護施設のサービス提供の記録とは、条文での扱われ方が違います。その対比は「看護記録の法的根拠と保存期間」にまとめています。
だから1日だけの担当がなじみにくい
この2つの条文から見えてくるのは、次のような構造です。
主治医の指示書(文書)
↓
訪問看護計画書(利用者の希望・指示・心身の状況を踏まえて作成)
↓
利用者への説明・同意・交付
↓
計画に基づく訪問と、経過の記録
↓
訪問看護報告書として主治医へその日だけ入る看護師が、この流れの途中に割り込むのは簡単ではありません。 指示書と計画書を読み込み、利用者の経過を把握したうえで訪問することになるためです。デイサービスのように、その日の利用者をその日に見て記録する形とは、求められる前提が違います。
制度が単発を禁じているわけではないものの、事業所の側から見て、1日だけの担当者に任せにくい構造になっているということです。
この章の出典
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第69条・第70条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037
3. もう1つの理由 ― 訪問には1人で行く
訪問看護は、看護職員が1人で利用者宅に行く形が基本です。これは条文が人数を定めているのではなく、サービスの実際の提供の形です。この点が、同じ「訪問」でも訪問入浴とは大きく違います。訪問入浴の3人という人数は、同基準45条1項が定めているものです。
訪問看護 | ||
|---|---|---|
訪問の形 | 看護職員が1人で訪問する | 看護職員1人+介護職員2人が基本(同基準45条1項) |
その場の判断 | 1人で行う | 同行者と相談できる |
1軒あたりの動き | 利用者ごとの計画に沿って、その人に必要な看護を行う | 入浴の提供が中心で、流れが決まっている |
引き継ぎの難易度 | 利用者ごとの経過・家族関係・住環境の把握が要る | その日の手順を聞けば動ける部分が多い |
訪問入浴が単発になじみやすいのは、チームで動き、その日の手順を聞けば参加できるという性格があるためです。訪問看護はその逆で、1人で訪問し、その場で判断します。
さらに、単発で入る場合には次のような実務的な壁があります。
- 利用者宅の場所と行き方、駐車場や駐輪の可否
- 玄関の開け方(鍵の預かり方は利用者ごとに違います)
- 家族の在宅状況と、家族との関わり方の経緯
- 使っている医療機器や物品の置き場所
- 記録システムへのアクセス権限
これらは「引き継げば済む」という量ではありません。 2章で見た制度の設計とあわせて、1日だけの担当者に任せにくい形になっています。
加えて、事業所によっては夜間・休日のオンコール対応を体制の前提にしている場合があります。日中だけ1日入る働き方が、事業所の体制と噛み合わないこともあります。
4. 訪問看護に近づくためのルート
「訪問看護に関心があるが、いきなり常勤で入るのは不安」という場合、次のようなルートがあります。
同行訪問の求人を探す
訪問看護ステーションが採用の前提として同行訪問の機会を設けていることがあります。求人票に「同行訪問あり」「同行期間あり」といった記載があるかを見てください。これは単発の勤務ではありませんが、入職前後に実際の訪問を見られるという点で、判断の材料になります。
訪問入浴から始める
訪問入浴は、訪問看護と同じく利用者の自宅に行く仕事です。チームで動くため単発の求人があり、在宅で生活している方の住環境や家族との関わりを見ることができます。 訪問看護そのものではありませんが、在宅の現場の感覚をつかむ入口になります。
詳細は「訪問入浴の看護師の仕事内容」にまとめています。
施設で、在宅に近い状態の方を見る
有料老人ホーム・サ高住の住宅型では、入居者が個別に訪問看護や訪問診療を契約していることがあります。施設の看護職として入ると、訪問看護のスタッフとやり取りする場面があり、その連携の形を見ることができます。
非常勤として週1回から始める
1章で見たとおり、人員基準は常勤換算で定められており、非常勤も員数に入ります。週1回や週2回の非常勤を受け入れることは、制度上は可能です。 実際に募集があるかは、地域と事業所によります。
単発の勤務ではありませんが、生活への影響を抑えながら始める方法としては現実的な形です。
ブランクからの復職については「ブランクのある看護師の復職ガイド|相談先・研修と、単発勤務の始め方」にまとめています。
→ どの施設の求人も、当日の体制と担当する範囲を確認してから応募できる形を整えています。公開時にお知らせしますので、LINEで先行登録(無料)をご利用ください。
5. 単発の求人を見つけたときに確認したいこと
数は限られますが、訪問看護の単発の募集が出ることはあります。見つけた場合に確認したい項目です。
訪問の内容
- □ その日の訪問件数と、1件あたりの想定時間
- □ 同行者がいるか、1人で訪問するか
- □ 訪問先の利用者の状態(医療機器の使用、処置の内容)
- □ 初回訪問の利用者が含まれるか
事前に見られる情報
- □ 主治医の指示書と訪問看護計画書を、いつ、どこで確認できるか
- □ 利用者ごとの経過をどの形で引き継いでもらえるか
- □ 記録システムのアクセス権限と、当日の操作の説明
移動と連絡
- □ 移動手段(自転車、自動車、公共交通)と、その費用の扱い
- □ 訪問先の場所と行き方の案内
- □ 訪問中に判断に迷ったときの連絡先と、つながる時間帯
時間・賃金・そのほか
- □ 勤務の開始時刻と終了時刻、移動時間の扱い
- □ オンコール対応が含まれるかどうか
- □ 雇用主、賃金の支払日と支払方法
- □ 持ち物と服装
応募前の確認と当日の持ち物は「初めての看護師単発バイト|求人選び・持ち物・当日の流れ」にまとめています。
6. 向いている場合・注意したい場合
向いている場合
- 在宅での看護に関心があり、まず現場の感覚をつかみたい場合
- 1人で判断することに慣れていて、その働き方を望む場合
- 病棟での経験があり、退院後の生活を見てみたい場合
- 移動を含む働き方が、生活のリズムに合う場合
注意したい場合
- 単発の求人は見つかりにくい分野です。見つからないことを前提に、4章のルートもあわせて検討してください。
- 1人で訪問するため、その場で相談できる相手がいません。連絡先とつながる時間帯を、始業前に確認してください。
- 利用者ごとの経過の把握に時間がかかります。事前に情報を見られるかどうかが、当日の負担を大きく左右します(5章)。
- 移動の時間と費用の扱いは事業所によって異なります。応募前に確認してください。
同じ「1日単位」でも、施設の種類が変わると業務はかなり違います。ほかの施設の記事もあわせてご覧ください。
単発勤務の全体像は「看護師の単発バイト完全ガイド|働ける場所・始め方・求人票の見方」にまとめています。
7. タメシビで想定していること
タメシビは、看護師・准看護師が、施設と直接雇用契約を結んで1日単位で働けるスポット勤務サービスです。応募後、施設が内容を確認して勤務が確定します(事前の面接・書類選考はありません)。求人には、業務内容、必要な経験、持ち物、当日の流れを明示する方針です。
訪問看護は、この記事で見たとおり、1日単位の勤務がなじみにくい分野です。無理に単発の形に当てはめることが、利用者にとっても看護師にとってもよいとは限りません。 タメシビとしても、どの分野の求人を扱うかはこれから検討する段階にあります。
タメシビは2026年内のサービス開始に向けて準備中で、どの地域・どの種類の求人が掲載されるかは、これから決まります。現時点で訪問看護の求人の掲載をお約束するものではありません。
よくある質問
訪問看護の単発の求人はまったくないのですか
募集が出ることはあります。ただし、この記事で見たとおり構造的になじみにくい分野です(2章・3章)。見つからない場合は、4章のルートも検討してください。
法律で禁じられているのですか
禁じられていません。人員基準は常勤換算で定められており、非常勤を排除していません(1章)。少ないのは制度の禁止によるものではなく、継続性を前提にした設計と、訪問の実務上の事情によるものです。
訪問看護は未経験ですが応募できますか
求人の応募条件によります。同行訪問の期間を設けている事業所もあります(4章)。応募条件は求人ごとに確認してください。
准看護師でも訪問看護で働けますか
人員基準60条1項1号イは「保健師、看護師又は准看護師(以下この条において「看護職員」という。)」として、准看護師を員数に含めています。一方、70条は訪問看護計画書の作成主体を「看護師等(准看護師を除く。)」としています。詳細は「准看護師の単発バイト」にまとめています。
オンコールは必ずあるのですか
事業所の体制によります。夜間・休日の対応体制を設けている事業所とそうでない事業所があります。単発や非常勤で入る場合にオンコールが含まれるかどうかは、応募前に確認してください。
訪問入浴とどう違うのですか
サービスの種類が違います。訪問入浴は看護職員1人と介護職員2人が基本でチームで訪問し、入浴の提供が中心です。訪問看護は1人で訪問し、主治医の指示と訪問看護計画書に基づいて看護を提供します(3章)。
週1回の非常勤から始められますか
人員基準は常勤換算で定められているため、非常勤の受け入れは制度上可能です(1章)。実際に募集があるかは、地域と事業所によります。
移動の時間は勤務時間に入りますか
事業所によって扱いが異なります。明示された労働条件で確認してください。労働条件の明示については「単発バイトに労働条件通知書はある?|1日だけの勤務で明示される項目と確認の仕方」にまとめています。
まとめ
訪問看護に単発の求人が少ないのは、制度が禁じているからではありません。人員基準は常勤換算で定められており、非常勤も員数に入ります。
少ない理由は、主治医の指示を文書で受け、訪問看護計画書に基づいて提供するという継続性を前提にした設計と、1人で訪問するという実務の形にあります。その日だけの担当者が途中から入りにくい構造になっている、ということです。
訪問看護に関心がある場合は、同行訪問の機会がある求人、訪問入浴、施設での訪問看護との連携、週1回からの非常勤といったルートがあります。単発という形にこだわらず、自分の状況に合う入口を探してみてください。
この記事の主な一次情報
法令・省令
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第45条・第60条・第61条・第69条・第70条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037
※2026年9月25日に確認(2026年9月30日に本文を見直し)。法令は改正されることがあります。この記事は条文の紹介であり、個別の事業所の運用や個別の事案についての判断を示すものではありません。なお、この記事は介護保険の指定訪問看護を前提にしています。医療保険の訪問看護(訪問看護療養費)、定期巡回・随時対応型訪問介護看護については扱っていません。
タメシビの先行登録
タメシビは、看護師が1日単位で施設と直接雇用契約を結んで働けるスポット勤務サービスです。応募後、施設が内容を確認して勤務が確定します(事前の面接・書類選考はありません)。求人には業務内容、必要な経験、持ち物、当日の流れを明示し、働いてから、その職場で続けるかをご自身で選べます。看護師・准看護師の登録料・利用料は無料です。
タメシビは2026年内のサービス開始に向けて準備中で、現在はLINEで先行登録を受け付けています。現時点で求人への応募を受け付けているものではありません。求人が公開されたときにお知らせを受け取りたい方は、先行登録をご利用ください。